熊本県を中心とした一連の地震発生から1カ月が過ぎた。全国の教会は、祈り、献金、支援物資、ボランティアを通して被災地に思いを寄せている。最も被害の大きかった益城町にある熊本東聖書キリスト教会(豊世武士[たけし]牧師)にゆかりのある、広島福音自由教会の拝高真紀夫牧師に話を聞いた。実家をはじめ、多くの親類が益城町近郊に住んでおり、弟の正剛さんは熊本東聖書キリスト教会で役員をしている。
頻繁に親戚や教会の関係者と連絡をとっているという拝高牧師は、「日常生活に何十倍もの負荷がかかっている。日常生活ができているようで、その他に、家の片付けがまだまだ残っている状態。被災した直後は、勢いだけで片付けていたが、徐々に体力的にも精神的にも疲れが見えてきた。家の補修などを始めようにも、余震の連続。また大きな余震がやってきて、せっかく補修した部分が再び壊れてしまうのではと思うと、まだ、次の一手を打つ段階には来ていないようだ」と話す。この1カ月は、「長いようであっという間だった」という。
熊本東聖書キリスト教会では、被災して以降、姉妹教会の熊本北聖書キリスト教会で2回ほど礼拝を共にしてきた。東教会の豊世牧師も、北教会に避難していた。その後、豊世牧師一家は、被災者のための住宅の抽選に応募してみるものの、何十倍もの競争率だったため、落選。民間の住宅を探し、1週間ほど前に引越しを終えたばかりだ。
「引越しとはいえ、家財道具は全て、倒壊した牧師館の中にあるため、生活に必要なものは何もなかった。全国の皆さんから届いた義援金をまずは、この牧師館復旧のために、感謝しつつ使ったようだ」と拝高牧師は話す。会堂復旧のめどはまだ立っていないものの、15日からは、会社の倉庫を一部借りて、そこで礼拝をささげることになった。東教会の新たな出発である。
また、広島福音自由教会会員の男性も熊本で被災している。男性は、勤め先の主力工場の一つが、被害の大きかった西原村にあり、屋根が崩落、工場ラインが壊滅した。被災当初は懸命にがれきの撤去、清掃に奔走したが、地震は続いており、これから復興のめどもたたない中、将来に対する不安を感じているという。
家庭集会で御言葉を聞き、内にある悩みを分かち合え、励まされているとのこと。拝高牧師は「御言葉の宣教と交わりとが回復することが、愛の奉仕と共に大切」と話す。
ボランティアの必要性について、拝高牧師は「必要な場所は、たくさんあるのだと思う。現に、益城町の教会もまだ手付かずのまま。もちろん、周りの住宅も。しかし、ボランティアをコーディネートする能力が追いついていかないようだ」と話す。
今後のボランティアの内容は、徐々に変わっていくことが予想される。「例えば、家の片付けで時間をとられ、『頂いた支援物資や義援金に対してのお礼がまだ出せないでいる』と嘆く被災者もいる。時間をつくるために、例えば、買い物をするボランティアをするなど、方法やアイデアはたくさんあるが、同時にそれをシステム化していくことも必要。ボランティアとは、代償を求めない働き。代償を求めない愛は、まさに神様の愛。それに、日本の人々が気付く日が来るのでは・・・と期待している。熊本東聖書キリスト教会は大きな被害を受けたが、その被災地の最前線から、全国へ向かって何か発信するような働きができれば感謝だ」と拝高牧師は話した。