熊本地震発生直後、熊本県庁を通じて避難所への炊き出しを依頼された神戸国際支縁機構(KISO)。KISOのボランティアらは、17日に神戸市内から食材を積んだ車で熊本県益城町へ向かい、18日の朝から19日昼までに豚汁やごはんなどの計5回の炊き出しを行った。KISOの代表を務める岩村義雄牧師(神戸国際キリスト教会)から現地報告が届いた。被災地でのボランティアの果たす役割を非常に重要視する岩村牧師は、現場での心構えについて「失われた羊たちに感情移入されたキリストの模範に従うだけでいいと信じる」と話す。
岩村牧師からの報告によると、被害は熊本県全体に及び、生活を送るのが困難な人で溢れている。16日に起きたマグニチュード7・3の本震は、1回目の地震とは比べものにならないほどの規模だった。実情を知らない人々の「まだ熊本地震のニュースが続いているのか」という声も耳にするが、メディア関係者、自衛隊、政府・行政関係者が集中しているのは益城町の役場付近、南阿蘇、大分県由布市など話題性のあるスポットで、特に報道されていない場所は目を覆うばかりの状況にあるという。
益城町には、キリスト教児童福祉会が運営する二つの児童福祉施設がある。そのうちの一つである児童養護施設「広安愛児園」でKISOは炊き出しを行っているが、700人近くが列を作り、食べ物を手にするまで1時間以上も待たなければならない状態だという。同町の3千人以上の児童の必要を賄っている学校給食センターも復旧のめどが立っていないため、KISOは継続した炊き出しの依頼を受けた。
同園の体育館にも100人規模の避難者が滞在しており、敷地内広場にもテント泊や車中泊をしている人々がいるが、こうした民間の隠れたところにはメディア関係者がほとんど足を運ばないため、その実態は外部に知られていない。中には思わぬ悲劇に見舞われた人、体調が優れない人も多く、人々の不満やストレス、怒りが充満しているのを感じるという。「『官』からの情報を絶対視し、『民』の叫びが届いていない。同園の石嶺昇園長らも嘆いている」と岩村牧師は話す。
そうした被災地において岩村牧師は、「自然災害が起きた場合、復興の鍵を握るのは『官』でもなく『民』でもない。双方の橋渡しをする献身的なボランティア活動だ。ボランティアのきめ細かいサービスが、被災者に安心や喜び、満足をもたらす」と、ボランティアの果たす役割を重要視する。その上で、ボランティアとして現地に入るクリスチャンたちに向けて、「布教する目的で被災地でボランティアをするならば、それは土つきの福音でないために、むしろ反感を与えるだけ。熊本バンド発祥の地とはいえ、土壌は非常に固く踏みつけられている。教勢を拡大するための錦の旗を降ろして、傷ついた葦(あし)、くすぶる亜麻布の灯心に仕えるスピリットがなければ、掛け声倒れになってしまう」と呼び掛ける。
「過去の震災において、集められた多大な募金が人件費、事務所維持費、宣伝費などに用いられ、痛みつけられた被災者には届かなかったことを教訓としたい。現場では、失われた羊たちに感情移入されたキリストの模範に従うだけでいいと信じる。被災者が生きていくために必要な経済的支援も大切だが、まず寄り添う働きの奉仕者がいてこその活動。引き続き、孤独死、孤立死に直面している被災者のために祈ってほしい」と、岩村牧師は語っている。
KISOが炊き出しを行っている広安愛児園の住所は、熊本県上益城郡益城町古閑73。 救援金の振込先は下記まで。ボランティア活動の詳細・問い合わせは、同機構の岩村氏(携帯:070・5045・7127、FAX:078・784・2939、ホームページ)まで。
<熊本地震救援募金振込先>
郵便振替口座:00900-8-58077
受取人:一般社団法人神戸国際支縁機構
※必ず「熊本地震のために」と書き添えること