提供が法律で禁止されているトラフグの肝(肝臓)を客に提供した疑いで、大阪府警は28日、会員制の有名フグ料理専門店「大阪とらふぐの会」の計4店舗を、食品衛生法違反容疑で家宅捜索した。国内の主要各紙が伝えた。
朝日新聞や産経新聞によると、大阪市東住吉区にある大阪とらふぐの会の店舗で1月中旬、養殖トラフグのコース料理を出した際、トラフグの肝を刺し身や「肝醤油(きもじょうゆ)」などとして男性客に提供した疑いが持たれている。家宅捜査では、フグの肝や仕入れ伝票など約200点を押収。大阪とらふぐの会は捜索後、全ての店舗で営業を中止している。
読売新聞によると、大阪とらふぐの会の経営者らは同紙の取材に応じていないが、男性従業員は「店長に言われて肝を出した。こんなことになるとは思わなかった」と話しているという。産経新聞によると、大阪とらふぐの会の調理師らはフグの料理免許を取得している。
大阪とらふぐの会は、入店するのに会員の紹介が必要となる会員制のフグ料理専門店。テレビ番組でも紹介されたことがあり、芸能人やスポーツ選手、政治家らも訪れる有名店だという。
ホームページ上では、会員制のため住所や電話番号は公開していないが、各紙によると、本店は大阪市天王寺区にあり、家宅捜索が行われた他の3店舗は大阪府内にあるという。ホームページでは、国内の店舗として、「本店」「PREMIUM」「佐一郎屋敷」「はなれ」「東京店」の5店舗が紹介されており、今回家宅捜索が行われたのは、東京店以外の4店舗とみられる。また、海外にも「KiMiYo New York」と「シンガポール店」の2店舗があると紹介されている。
肝の提供による健康被害はこれまでのところ報告されていないが、警察は今後、経営者らから事情を聴く方針。
食品衛生法では、販売・提供できない食品・添加物として、6条2号で「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない」と定めている。
この条項の但し書きについて、厚生労働省は「食品衛生法施行規則」の1条1で「毒な又は有害な物質であつても、自然に食品又は添加物に含まれ又は附着しているものであつて、その程度又は処理により一般に人の健康を損なうおそれがないと認められる場合」としており、同省環境衛生局長通知「フグの衛生確保について」で、「卵巣、肝臓等の有毒部位の除去は、的確に行うこと」「除去した有毒部位は、別表2の塩蔵処理の原料となるものを除き、焼却等により確実に処分すること」と定めている。
別表2は、「別表1に記載されているフグの卵巣及び皮であって、その毒力がおおむね10MU / g以下となったもの」と説明されており、肝(肝臓)は提供できないことになっている。
別表1によると、処理を行うことにより、健康を損なう恐れがないとみられるトラフグの部位は、筋肉、皮、精巣の3カ所。他のフグについても、筋肉は全てで処理後であれば食用可となっており、皮と精巣については一部のフグで処理後に食用可となっている。