イエスの生涯を日本の代表的な文化の一つである漫画という形で表した『マンガメサイア』。2006年に英語版が出版されて以来、すでに約33言語に翻訳されている。中には、聖書など一切の宗教関係の書物が届くことのない地域や、そういった書物の流入を厳しく制限されている国もあるが、漫画であることから、流入が許される国も多いという。『マンガメサイア』を出版している新生宣教団のチェアマン、ロアルド・リーダルさんに話を聞いた。
「『日本から世界の果てにまで、福音を宣べ伝える』働きこそ、私たちのミッション」とその思いを語るリーダルさん。まさにこの「世界の果て」に挑戦すべく、現在までにさまざまな国に『マンガメサイア』を届けてきた。
当初は、「イスラム教圏以外」を目標にこのプロジェクトをスタートしたが、6、7年前にアラビア語に翻訳をして、エジプトに同書を届けたのをきっかけに、昨年、急激に悪化したシリア難民にも届けられることになった。
昨夏には、ヨルダン、レバノンに避難しているシリア難民に配布するためにアラビア語版を2万5千冊送った。識字率の低い地域でも、漫画は受け入れられ、子どもだけでなく、多くの大人の目にも触れているとのこと。
「配布は、難民支援を行っている現地の教会で行っている。支援を受けている難民の多くは、イスラム教徒だと思われるが、大変喜ばれていると報告を受けている。難民の支援を行うNGOなどは数多くあるが、直接御言葉を届けている支援団体は少ないのでは」とリーダルさんは話す。昨年12月には、ヨーロッパに避難しているシリア難民に向けて3万8400冊を送った。
これまでに届いたメールには、シリアの隣国で起きた多くの奇跡が書き記されていた。「今日、25人のシリア難民がイエス様を受け入れました! ハレルヤ!」など、リーダルさんの元には、各国からうれしい知らせが届いている。
ヨルダンのアンマンにいるキリスト教の牧師はリーダルさんに寄せたメールで、「神様は、中東にも大きく福音の扉を開けてくださった。10年前の状況からは、考えることすらできなかった」と喜びを語った。彼はまた、神様が起こした一つの奇跡について、メールでこのように伝えた。
「ブルカに身をまとったイスラム教徒の女性が、ある日、教会へやってきた。これは、イスラム教徒にとって、最も禁止されていることの一つだ。イスラム教徒の女性が、キリスト教の教会へ一人でやってくるということは、常識的に考えたら、ありえないことだった。しかし、彼女は『どうか私が何を着ているかを見ないでほしい』と早口で言った。そして、彼女が夢で見た光景について話し出した。白い洋服を来た男性が、彼女にどこに行けば助けを得られるかを話した。どの道をどのように歩いて行けば良いか、そしてどのような建物に入ったら良いかを明確に伝えたのだ。その通りに来たら、この教会にたどり着いた。彼女と彼女の家族もまたシリア難民だった」
このことがきっかけで、この教会では、イラクやシリア難民への支援を始めた。今では、約800家族、5千人が毎月、彼らの支援を受けている。教会が行動によってキリストの愛を伝えるとき、難民となった人々もまた心を開き、そのうちの何人かはイエスを救い主として受け入れるのだという。
「難民となった人々は、母国を離れ、家族、文化、習慣、宗教など全てを捨てて、避難を余儀なくされている。彼らにとって、真の『希望』がこの『マンガメサイア』に込められている。イスラム教徒が多く、特に過激派などが活動する地域での配布は、絶対に安全とは言えない。しかし、神様が不思議な方法で、いつも道を備えてくださっている」とリーダルさんは言う。
新生宣教団海外宣教部の赤松清さんは、「私たち日本人にとって漫画は、おそらく幼い時からなじみのあるものだと思う。しかし、海外に出ると、漫画は日本を象徴するような文化だと感じさせられる。この『マンガメサイア』が、クリスチャン人口が国民の1パーセント未満といわれる日本で作られ、ここから世界に送られていくことに、また大きな意味を感じる」と話す。
現在は、ペルシャ語版の制作にもとりかかっているという。まさに「世界の果てまで福音を宣べ伝える」ため、新生宣教団の活動はこれからも続く。