ギリシャのレスボス島は、紛争を逃れてくる難民や移民にとって、ヨーロッパで最初の上陸地点である。彼らの多くは、より良い暮らしを求めて、危険な地中海をものともせず、密輸業者に頼っている。
非政府組織(NGO)や教会の人たちは、彼らを岸で歓迎する最初の人たちである。そのような組織の一つに、ギリシャ正教の司祭であるエフストラティオス・ディモウ神父が設立した、「アガリア」(Agkalia、ギリシャ語で抱擁という意味)がある。欧州議会はアガリアに対し、レスボス島におけるその活動について、2016年のラウル・ワレンバーグ賞を授与した。
授賞式は1月13日にフランスのストラスブールにある同議会の本部で行われた。世界教会協議会(WCC)が2月25日に伝えた。
2014年にスウェーデンの要請で始まった欧州議会のこのラウル・ワレンバーグ賞は1万ユーロ(約126万円)の金額である。それは、個人や集団または組織による卓越した人道的な功績に対し、2年ごとに授与されている。(注:ラウル・グスタフ・ワレンバーグは、第二次世界大戦末期のハンガリーで、迫害されていたユダヤ人の救出に尽力したスウェーデンの外交官で実業家。スウェーデン語読みではラオル・グスタフ・ヴァレンベリ)
アガリアは、「パパ・ストラティス」と呼ばれ2015年9月4日に亡くなったエフストラティオス神父によって、09年にレスボス島で設立された。
「毎日、100人から200人がカロニ(レスボス島の中心にある町)へやって来るのです」と、当時57歳だったこの正教会の司祭は、2015年7月に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とのインタビューで語った。
「地元の人たちは、私たちのところへ助けを求めに来るようにと彼らに言います。私たちは彼らに食べ物や水、赤ちゃんのためのミルク、靴、衣類を与えます。彼らはここに泊まることもできます。私たちには毛布や床のマットレスもありますから」
このNGOは、その献身的な仲間たちがエフストラティオス神父の努力を追求することで支援を維持してきた。
「ヒューマニズムと寛容さだけが、この暗い時代にあるヨーロッパにより良い日々をもたらすことができるのです」と、アガリア代表のゲオルギオス・ティリコス・エルガス氏は授賞式で語った。「ヨーロッパの人たちや、助けを求める私たちの呼び掛けに応えたこんなにも多くの国々から来たボランティアの人たちは、いかにしてこれを達成できるかという模範を示す―それは連帯を通じてなのです。ユートピアであってもなくても、私たちはそれがギリシャで起きているのを自分たちの目で目の当たりにしてきたのです」
欧州議会はアガリアの「彼らの出自や宗教に関わりのない、何千人もの難民に対する、前線における支援の提供で、卓越した功績」に言及した。
受賞者が2015年に発表されたとき、審査員会はレスボス島が難民にとってヨーロッパへの入り口になったと説明した。約1万7千人の難民や移民を同年5月から支援し、困窮している人たちに一時的な避難所や食糧、水、そして医療支援を提供する模範として、欧州議会はアガリアを称賛した。
「ボランティアたちに基盤を置く、小さくて柔軟な地域の組織として、アガリアは、切迫した地球規模の問題に対する、ヨーロッパの市民社会による効果的な行動の指導的な模範を示している」と、欧州議会のソルビョルン・ジャグランド事務総長は審査員会の決定を発表して語った。
「アガリアの活動は、欧州議会の基本的な価値を反映し、ヨーロッパとその範囲を超えて人権を促進し守るためのその働きに貢献している」と、同事務総長は付け加えた。