「彼らはほとんど何も持たずに、恐怖と希望に満ちて到着しました」と、パオロ・ナソ博士は、2月29日にベイルートから来た飛行機から、93人のシリアからの移住者―うち41人は子どもたち―が降りるのを見つめながら話した。世界教会協議会(WCC)が9日、公式サイトで伝えた。
「彼らは過激派組織『イスラム国』(IS)の迫害や、女性や子どもたちあるいは非戦闘員を免れさせない戦争の暴力を逃れてきたのです」と、移民に対処するためにイタリア・プロテスタント教会連盟(FCEI)が運営している包括的なプロジェクト「地中海の希望」国際関係コーディネーターのナソ博士は言う。
彼は「イタリアへようこそ」と書かれた横断幕を持つのを手伝いながら、何年も苦闘に費やして疲れ果てた人たちの言葉を聞く。「私は根こそぎにされた木のような気分です」と、「根付くための新しい土地」を探し、難民キャンプで4年を過ごしてきた大家族の女家長、マリアムさんは言う。
マリアムさんらは、教皇ヨハネ23世共同体協会のプロジェクト「オペレーション・ダブ(ハト作戦)」と関連のあるイタリアのボランティア団体が支援をしていたテル・アッバスのキャンプで暮らしていた。
「昨年11月、私はテル・アッバスへ行きましたが、問題はいつも同じです。つまり、合法的にイタリアへ到達するチャンスはあるのかということです」とナソ博士は言う。当時、彼の答えは注意深くも自信あるものだった。彼は、イタリア・プロテスタント教会連盟や聖エジディオ共同体、そしてイタリア政府が企画したプロジェクト「人道的通路」の立ち上げを助けている最中だった。
彼らは、「人道的通路」の設立に必要な会合や書類事務を通り抜けると、彼らがキャンプで出会った人々の苦悩に動機づけられ、もっと多くの人道ビザの発行を実施するようにと、イタリア政府に圧力をかけた。「会合ごとに質問をしては問題を提起してきた役人たちを前に、私たちはいつも、現場で出会った人たちの期待、そして私たちが彼らにした約束を伝えました」とナソ博士は言う。
今週到着する移民たちが、アリタリア航空が提供した便を予約することができたこともあり、ナソ博士は子どもたちの声を耳にすると、熱心に自らの言葉を人々に伝えている。彼はまた継続的な支援と祈りを強く求めている。
「うちのテントをイタリアに持ってきたらどう?」と、家に一度も住んだこともなければ、本物のベッドの上で寝たこともない子どもが問い掛ける。
「僕は治療を受けるんだ」と、10歳の時に手りゅう弾で片足を失ったディヤールという名の少年が希望を語る。「そうすればたぶん僕は新しい足がもらえるかもしれないね」
ディヤール君は本当に足がもらえることになると、ナソ博士は言う。高度な人口補てつ物を提供している財団のおかげで。
ナソ博士は、「人道的通路」が実際的な模範―政策の変更でいかにして命の喪失を防げるかという事例―としての役目を果たし得ると付け加えている。「壁と有刺鉄線、そして排除のヨーロッパに対する、力強い希望のメッセージを送るのです―エキュメニカルなかたちで正しいことをしようとしてきたキリスト教共同体にとって前向きなメッセージを」と同博士は語った。「私たちは、そのようなメッセージがブリュッセル(欧州連合[EU])の指導者たちやイタリアの世論を動かすことができるようになればと願っています」