私の住むカリフォルニアは、北アメリカで最も人口の多い州で、約3400万人が住んでおり、移民の多い州としても知られている。日系人や日本人も多いため、日系教会も他の州に比べて多い。牧師も若手からベテランまで、素晴らしい牧会をされる多くの先生方が集まっている。
その教会を、陰になり日なたになり支えているのが、女性の教会員たちだ。リフレッシュメント(軽食・お菓子)の準備や片付け、青年会や役員会での奉仕など、毎週奉仕に多忙な友達を何人も知っている。その中でも藤本美奈子さんの働きは素晴らしく、お会いするたびに教えられることがたくさんある。
名古屋市熱田区に生まれ、日系3世のご主人と結婚し2児の母でもある美奈子さんは、小さい時から活発な性格で、高校時代も男子とドッジボールをするのが日課だったという。しかし、子どもの頃は、保育園に上がる少し前に見たお寺の地獄絵が怖くて忘れられず、夜の暗闇がとても怖かったという。
小学校の教師になりたくて、英語の勉強のため、アメリカに6カ月間の観光ビザで来ていたときのこと。そろそろ日本に帰ろうかと考えていたとき、知り合ったご主人に「僕はクリスチャンの女性としか結婚を考えていない」と2回目のデートで言われた。
「車に交通安全のお守りをぶら下げていたのを主人が見て、『君の信じる宗教はこれか』と言われました。お互いに好意を持ち始めていたことが分かったので主人は切り出したと思いますが、私としては、ただ事故に遭いたくないという一心で下げていました。当時は、キリスト教といわれても、アメリカに来て、教会とはどういうところか見てみたいとの思いから、知り合いの方に一回だけ連れていってもらったことがあるだけでした」
「キリスト教というものが、どんな教えで、何を信じているのか知ってから、信じるか信じないかを決めると主人に伝えました。牧師を一人知っていたので、その教会に通うことにしました」
「教会では、今まで自分の信じてきた倫理観、人生観との違いに戸惑いました。進化論しか知らなかったので、創造論にはびっくりしました。聖書の創世記1章1節『初めに、神が天と地を創造した』との一節を信じることができたとき、黙示録22章21節までの聖書全てを信じることができました」
信仰を持っていても、まだ洗礼を受けていなかったご主人と一緒に、1999年9月に洗礼を受けた。
現在はJEMS(Japanese Evangelical Missionary Society)で日本語部のコーディネーターを務めている。JEMSは、全米の日本語で礼拝している教会を超教派的にサポートすることを目的に、修養会や伝道集会を企画し、教団教派の枠を超えてクリスチャンの信仰が成長し、クリスチャン同士がお互いに励まし合い、つながりを持つ機会を提供している団体だ。
これからの抱負を聞いてみた。
「JEMSが掲げるビジョン『JESUS TO EVERY JAPANESE, JESUS EVERY DAY』を実践していくことです。具体的には、毎年7月初旬に1週間開催するマウント・ハーモンカンファレンスに参加したクリスチャンの方々が励ましを受け、それぞれの教会を励ますことができるようにしていきたい。将来的には、日本のクリスチャンとアメリカで生活するクリスチャンがお互いに交わり、励ましを受ける場としたい。クリスチャンがノンクリスチャンの家族や友人を誘い、伝道していくカンファレンスにもしたい」
「JEMSは主に、英語を話す宣教師を送り出す働きをしているので、これからは、在米日本人クリスチャンの方々が力を受けて、日本へ伝道に行くためのサポートをしていきたい」
どこの集会に行っても立ち働く美奈子さん。彼女の愛唱聖句、「何をするにも、人に対してではなく、主に対してするように、心からしなさい」(コロサイ3:23)通りの人生を歩む姿に、多くの人が励まされている。
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マリ・パクストン(Mari Paxton)
日本でスタジオミュージシャン、コマーシャルシンガーとして活躍後、オーストラリア、アメリカへ渡る。結婚後、ラマーズクラスで知り合った牧師夫妻を通して教会に導かれ、クリスチャンに。家庭集会を日本人主婦向けに始める。現在、南カリフォルニアのサドルバック教会(リック・ウォレン牧師)でゴスペルクワイアのソリストとして活躍し、3人の子どもの成長とともに、夫婦向けの家庭集会をホストしている。2015年9月には、アンディ・デロス・サントスのプロデュースでアルバム「主を信じよう」(iTunesにて配信中)を発表した。