過日、四肢欠損症という障がいと共に生まれたニック・ブイチチさんの動画を鑑賞いたしました。「自分には他の人と違うからこそできることがある」に違いないと感じて、自らの人生の使命と目標を見いだしたニックさんの生き様から、さまざまなインスピレーションを頂きました。ニックさんが若い人々に話し掛けるときには、「決して、絶対に、永遠に、諦めるな!」という強いメッセージを語っています。それを、ご自身の実際の経験から語ります。
手もなく足もないニックさんが倒れたら、どうやって起き上がればいいのだろう、起き上がるための試行錯誤をきっと何度も何度もし続けたのでしょう。そして、ついに自分の力で起き上がることができたのです。諦めたらそれまでです。でも諦めなければ、いつか何らかの道が開かれるのです、とニックさんは語ります。
人生においても同じです、とニックさんは言います。人生においていつか倒れてしまって、もう起き上がれないと思うときがあるかもしれない。失敗してしまって、もうどうしようもないと思うときがあるかもしれない。しかし、「決して、絶対に、永遠に、諦めるな!」と言います。諦めずに、挑戦していきさえすれば、必ず何かの道が開かれるから、と。
私はこのメッセージから、結果よりもプロセスが大事だというメッセージを受け取りました。挑戦していくことが大事なのであって、決して人生の途中で諦めてしまわないこと、結果は神様に委ねて、今自分に与えられている課題を、目標を、使命を、挑戦し続けること。結果が思い通りでなくてもよいではないか、世間の評価を受けられなくてもよいではないか、自分にとってこれが神様から与えられた大切な仕事だと思うことを、やり続けていくことが尊いことなのだ、というメッセージとして受け取りました。
事実、ニック・ブイチチさんはその挑戦を続けておられます。「苦悩の坩堝(るつぼ)の中から出る思想だけが人の心を打つ」と言われるように、苦しい青少年時代を生き抜き、キリストと出会い、信仰が与えられ、自らの使命をはっきりと意識することのできたニックさんは、これからも世界中の人々に勇気と希望を与えていくことでしょう。
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福江等(ふくえ・ひとし)
1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001年(フィリピン)アジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)など。