卒業式で「君が代」の伴奏を拒否したことに対する東京都人事委員会の減給処分は不当だとして、クリスチャンの元小学校音楽教諭、岸田静枝(しずえ)さん(65)が提訴し、今月8日に東京地方裁判所が減給処分取り消しを命じていた訴訟で、被告の東京都が22日までに控訴したため、原告の岸田さんも同日、1審で退けられた裁決取消請求と国家賠償請求をめぐり控訴した。
岸田さんの弁護団の一人である高橋拓也弁護士は同日、本紙に対し、「被告(東京都)が控訴申し立てをしました。本日(控訴期限)、被告の控訴申し立ての事実を確認しましたので、原告の当方も控訴申し立てをします」とメールで回答。高橋弁護士によると、行政事件訴訟法改正前は、東京都教育委員会と東京都人事委員会を独立した被告として扱ってきたが、現在は東京都のみを被告としており、この中に両委員会が含まれるという。
岸田さんも23日、本紙に対し、原告側からの控訴は当初考えていなかったが、「都側が東京高裁に控訴をしたというので、私たちも控訴の手続きをしました」と伝えた。
1審では、岸田さんが求めていた懲戒処分取消請求、裁決取消請求、国会賠償請求のうち、懲戒処分取消請求は認められたが、他の2つの請求は退けられていた。
岸田さんは、東京都人事委員会による減給処分が、憲法19条(思想・良心の自由)と20条(信教の自由)に違反するなどと訴えており、「都側が処分について控訴をしてきたのは残念ですが、しかしもう一度、憲法判断について全面展開ができます」とコメント。1審判決で、「本件職務命令(「君が代」の伴奏)が、原告の信教の自由についての制約となる面があることは否定しがたい」と判断が出たことは画期的だとし、2審ではこれ以上の判断を引き出せるようにしたいと語った。
一方、被告側で懲戒処分取消請求を担当する東京都教育委員会の法務監察課には22日、問い合わせをしたが回答は得られなかった。また、東京都人事委員会は、本紙からの問い合わせに対し、裁決取消請求については「勝訴した」として「控訴する立場にない」と回答していた。