「日の丸・君が代」強制反対予防裁判の高裁、控訴審第2回口頭弁論が20日、東京高裁で行われた。教員原告側の加藤文也弁護士は、この裁判は思想良心の自由という日本国憲法の根底をなす基本的人権を守る重要な裁判であることを理解してほしいと20分にわたり陳述。国家の宗教や遺憾の強要に対してキリスト教徒としての良心から抵抗した事件として教育勅語拝礼を拒否した内村鑑三不敬事件をとりあげ、都教委の通達にどうしても従えない教職員の心情を説明した。
03年に都教委の出した「国旗掲揚、国歌斉唱等実施にかかわる10.23通達」は、東京地裁において「この通達は違憲違法であり、この通達によって教職員を処分してはならない」との教職員側の主張を認める判決が出ていたが、都教委はこれを不服として控訴した。
加藤弁護士は、「教職員は、教育に携わるものの責任と良心によって、この通達による学校への「日の丸・君が代」の強勢に反対していることの意味を深く探り、その重要性について理解を深めて欲しい」と述べ、先のピアノ伴奏拒否最高裁判決を批判し、また都教委の通達を出す状況の事実のすり替え、歪曲を指摘した。
教職員側は、都教委がすでに実施率100%をこえた時期に通達を出したことは、詳細に都教委に忠誠を誓わせるシステム作りであり、それに反対する教職員の排除であると見ている。
地裁判決では、「日の丸・君が代」が戦前、軍国主義教育の中で果たした役割により、それに従えない者がいることを認めている。加藤弁護士は、国家の宗教や遺憾の強要に対してキリスト教徒としての良心から抵抗した事件として教育勅語拝礼を拒否した内村鑑三不敬事件をとりあげた。
内村鑑三不敬事件は、井上哲次郎文学博士がキリスト教に対する反駁をしたことで「教育と宗教の衝突」なる論争に発展した。内村鑑三は、自分の愛するものは2つのJ、つまりキリストと日本であり、誰よりも強く日本を愛しているとし、自分の「愛国心」とは、戦争に反対し、日本が正義のある理想の国になることを目指すことと主張。それに植村正久、柏木義円らが応援に加わった。
加藤弁護士は、ここにわが国の思想良心の自由に対する論争の歴史の重要性を思うべきであると紹介。神社参拝を国民儀礼としてだれにも強要して軍国主義教育を行い、その結果敗戦へと導かれたわが国の歴史を教職員が思うとき、この通達について強く反対し、あるものは処分を受けても教職者の良心として見過ごすことはできない心情があることを深く掘り下げる必要があると陳述した。