潜入覆面調査で、米国の非営利団体「全米家族計画連盟」(PPFA)の中絶推進派の医師が、1億ドル(約120億円)規模の予算を持つこの団体が、どのように胎児の臓器を丸々取り出し、胎児臓器販売業者に売っているかについて話す動画が14日に公開された。
この動画は、医療の倫理や発展について報道・監視する市民ジャーナリストらによる非営利団体「医療向上センター」(CMP)のウェブサイトに掲載された。CPMが「違法」だと主張する、PPFAの行為についての3年間にわたる調査の一部だ。中絶胎児の体の各部分は、販売業者を通して、大学や製薬会社、政府機関に送られる。
PPFAの医療サービス専務理事で、ロサンゼルスで妊娠24週までの中絶を行う医師のデボラ・ヌカトーラ氏は、2014年7月25日に撮影されたこの動画の中で、中絶胎児の臓器を確実に得るために部分出産中絶(※)を行っていると語った。
「私たちは、心臓、肺、肝臓を取るのはとっても得意ですよ。これらの部分を壊すようなことはないです」とヌカトーラ氏。「私は基本的には下の方で壊し、上の方では壊しません。そして、全てを傷なく得られたかを確認するのです」
彼女はまた、こうした「標本」は30ドル(約3700円)から100ドル(約1万2000円)の間で取り引きされるとも述べた。そして、中絶の手術は特定の体の部分に合わせて変えることができるとも提案した。
この動画について、南部バプテスト連盟倫理宗教自由委員会のラッセル・ムーア委員長は、「1時間ほど押し黙ってしまいました」と語った。
ムーア氏はフェイスブックに署名入りの記事を投稿し、他の中絶反対派の指導者たちと共に信ぴょう性を確認するまでは、この動画を悪い冗談だと思っていたと述べた。
「もしこれを見て良心にショックを受けないとしたら、他に何で受けるでしょう」とムーア氏。「赤ちゃんがただ母親の子宮で命を奪われるだけではなく、その子たちの遺体が利益のために汚されるのです。これはただ殺人的だというのみならず、もっとも残虐な方法での殺人的行為です」
カトリックの中絶反対団体「プリースト・フォー・ライフ(命のための聖職者たち)」のフランク・パボーン神父は、この行いは道徳的に非道であるだけではなく、「いくつかの州法や連邦法に違反しています」と述べ、中絶産業は「完全に腐敗している」と非難した。
「もし赤ちゃんを殺すのをやめられるほどの良心がないのなら、中絶胎児の体の一部を売ることをやめられる良心もないのでしょう」とパボーン神父。
一方、ムーア氏の署名記事がフェイスブックによりブロックされたという報告が、多くのユーザーやムーア氏自身からなされた。ムーア氏はツイッターでフェイスブックに対し、「フェイスブック様、PPFAの人身売買に抗議することの何が、(ポリシーに違反する)『暴力的』(な発言)なのですか?」と語り掛けた。
フェイスブックのユーザーが、ムーア氏のコメントにリンクを張ろうとすると、サイトが「フェイスブックを見ている他の人が、このコンテンツを『暴力的』だと報告したために」ブロックしたという告知が出る。
中絶反対団体「リブ・アクション」のリラ・ローズ代表も、PPFAが利益のために違法に中絶胎児の臓器を摘出していることが明らかになったとして、戦慄(せんりつ)を覚えたと語った。
ローズ氏は14日、「CMPのこの調査によって、PPFAの想像できないほどの恐ろしさが明らかになりました」とする声明を発表した。
「人間のいのちの搾取とその隠匿、また米国で最大の中絶チェーンが利する闇市場は、言語道断で心痛むだけでなく、(PPFAの)セシール・リチャーズCEOから地域のクリニックに至るまで、中絶という巨人が芯まで腐敗していることを表しています」
米クリスチャンポストと他の報道機関の呼び掛けで14日に開催された記者会見で、この覆面調査プロジェクトのリーダーであるデイビッド・ダレイデン氏は、PPFAの連邦法や州法における違法性を調査するに当たり、現在どのような法的手段を取っているかはコメントできないと語った。
動画の中でヌカトーラ氏は、中絶胎児から体の一部を取るという行為を禁じる法律は、「解釈による」と説明していた。
一方、CMPは、中絶胎児の体の一部を売ることを禁ずる州法や連邦法があるとし、「人間の胎児臓器の売買は、10年以下の懲役か50万ドル(約6200万円)以下の罰金に処せられます」とする声明を発表した。
今後、CMPによるさらなる調査動画と文書が発表される予定だ。
※ 部分出産中絶:通常妊娠5~6カ月の胎児に使われる手法で、胎児の手足と体を子宮の外に出し、頭は子宮内に残した状態にした後、胎児の頭蓋骨に穴をあけて脳を出し、頭蓋をつぶして取り出す胎児縮小術の一つ。かつては母体が危険な時に緊急避難的に行われた手法だが、現在ほとんど行われることはない。