2013年に韓国カトリック司教協議会が発表した小冊子『核技術と教会の教え―核発電についての韓国カトリック教会の省察』の日本語訳がこのほど完成した。核技術推進派・反対派の両方の考えも含め、核をめぐる基本的な知識が紹介されており、「カトリック教会が原発問題をどのように考え、どのような態度を取るかを指し示す」(日本カトリック司教協議会会長・岡田武夫大司教)内容となっている。
同書の前書きで韓国カトリック司教会義議長のカン・ウィル司教は、韓国カトリック教会が核(原子力)発電問題に大きな関心を持つことになった理由として、東日本大震災に続き発生した福島第一原発事故を挙げている。韓国でも消費電力の相当部分を核(原子力)発電に頼っていることから、韓国カトリック教会は福島の原発事故に大きな衝撃を受けたという。未来の世代の生存と幸せのために、核(原子力)発電の脅威と問題点について、キリスト者として真剣に取り組まなくてはならないという認識を持つことになったという。
こうした認識に至った背景には、過去20回にわたり、毎年、両国の司教たちが集まり、両国の歴史問題やさまざまな社会問題・司牧問題を取り上げながら、互いに意見と体験を分かち合ってきた日韓司教交流会の積み重ねがある。岡田大司教も、同書に寄せた文書の中で、11年と12年の集まりで、原発に関して両国で学習し、この問題が「いのちに関する深刻な危機」だと両国が共有したことを明かしている。
同書は、専門家でなくても、わずかな努力で確認できる知識を使って構成されている。「核」に関する基礎的な情報・特性を述べ、核(原子力)発電の推進派と反対派の主張を紹介した上で、教会において、核技術が持つ非民主性、不正義、真実の歪曲と、反平和性について省察している。その中で、「『核』は、生存権と環境権をひどく傷つけ、人権に反するものとして、キリスト教の信仰の出発点であり完成である、神の創造の業と救いの歴史を否定する」と宣言し、「核(原子力)発電と核兵器に違いはない」という姿勢を取っている。
同書の最後には「教会の願い」として、政府、企業、マスコミ、市民に対して、核(原子力)問題に対してそれぞれが持つ役割を訴え、農業の保護者とされる聖イシドロの言葉「おお! 聖霊よ、あなたの名によって結びつけられたわたしたちが、主の憐(あわ)れみと正義に従い判断することにより、今日もわたしたちの行いが主の御旨にふさわしくあるようにしてください」で締めくくられている。
同書は非売品だが、送料受取人負担(着払い)で提供可能。問い合わせは、カトリック中央協議会司教協議会秘書室(〒135-8585 東京都江東区潮見2−10−10、電話:03・5632・4445、ファックス:03・5632・4465、メール:[email protected])まで。