日本カトリック正義と平和協議会はこのほど、「平和のための脱核部会」を設立することを明らかにした。
日本カトリック司教協議会は2011年11月、「いますぐ原発の廃止を~福島第1原発事故という悲劇的な災害を前にして~」というメッセージを発表しており、同部会はこのメッセージの具体化を前進させるもの。名称に「脱核」と入れたのは、「原発も核兵器も、実は基本は同じであることを忘れないためです」(光延一郎神父=同部会会長)という。
光延神父は、同部会の紹介文書で、「多くのカトリック者は、同メッセージから日本の司教団の脱原発への明確な意志を受けとったことでしょうが、この間、いかにこれをカトリック教会として実現していくかについてのオリエンテーションがやや乏しく、そのためこの問題に関心を寄せる人々も、それぞれ自分の場で個々ばらばらに活動するほかないという状況が続いてきたと思います」と、これまでの状況について述べた。
「大震災と原発事故から3年半が過ぎ、緊急の物的支援を必要とする時期から、今はむしろ、被災した方々の深く傷ついた心への寄り添いなど、宗教がなしうる精神的な支援が求められる時に移ってきたかと思います」と言い、「今後長期的に取り組んでいかねばならぬこうした問題のためにも、この部会の設立が意味を持つと思います」と語る。
現在、正義と平和協議会が関わる脱原発関連の活動としては、社会司教委員会が中心となって行なわれている、司教団メッセージをフォローし深めるための文書作成と、原発問題に関心を持つカトリック者をつなげるネットワーク作りの2つがある。光延神父によると、平和のための脱核部会は、主に後者に関わることになるという。
「各地で脱原発に関心を寄せ、また活動している個人やグループを『脱原発ネットワーク』として緩やかにつないでいくことができればと思います」と光延神父。一方、「両方の課題には、韓国カトリック教会の動きが大きな刺激となっています」と言う。
「隣接する両国は、もしどちらかで原発事故が起こったなら、被害を共有することになります。政治情勢が両国の関係を表面上疎遠にしている今こそ、教会という国境や民族を超えたつながりにおいて、互いに協力し合うことは大切なことでしょう」
「福島の原発事故は、人間の救いに必要な『神との和解』『人間相互の和解』『創造との和解』という3つの関係を全て断ち切り、分解させる出来事でした。人類が自ら招いたこの苦渋の経験をいかに受け止め、回心の糧にするか、未曽有の原発事故の当事者として世界に応えていく道をこの部会を通して探していければと思います」と、光延神父は結んでいる。
正義と平和協議会は、6月に脱原発ネットワークを発足させると発表していたが、今回の部会設立はそれを変更したもの。これに伴い、14日に福岡のカトリック大名町教会で行われた正義と平和全国集会福岡大会では、同部会の説明会が行われた。
一方、同じ福岡では、カトリック信徒の麻生泰氏が会長を務める九州経済連合会が、「川内および玄海原子力発電所の一刻も早い再稼働を求める」という要望書を、九州の他の3つの経済団体と共に6月に公表している。
朝日新聞などの報道によると、安倍晋三首相は7月、九州の財界人と福岡市内で会食した際、川内原発の早期再稼働を要請され、「川内はなんとかしますよ」と応じたという。この時には、麻生太郎副総理兼財務相の弟である麻生泰氏も同席していた。