日本最初のプロテスタント教会として知られる、日本キリスト教会横浜海岸教会(横浜市中区)の改修工事がこのほど終わり、5月10日に改修完成礼拝が行われた。82年ぶりとなった大改修では、窓枠全ての取り換えを含めた外観の全面改装のほか、老朽化対策や耐震補強、信者の高齢化に配慮したバリアフリー化も実現。新たに月1回、礼拝堂を一般公開する日も定めた。改修工事を行っていた約1年半、近隣にある横浜YMCAやミッションスクールの協力を得て礼拝を守ってきた信者らは、新しく生まれ変わった会堂で喜びを持って礼拝をささげている。
今回の改修では、礼拝堂の正面玄関に自動ドアを設置し、礼拝堂のある2階へ行くためにエレベーターを取り付けた。また礼拝時に1階までトイレに行かなくてもすむように2階にもトイレを作り、車いす・オストメイト対応のトイレも設置した。幼い子どもと一緒に礼拝に来る人や、体調がすぐれない人が利用できる「親子室」も新設した。
現在使われている会堂は1933年に献堂された。1875年に建てられた最初の会堂は、1923年の関東大震災により倒壊し、焼失。その後、仮会堂時代を経て現在の会堂が建てられ、80年以上にわたって使われてきた。
戦前に建てられた長い歴史を持つ会堂内部は、15世紀末頃から17世紀初頭までの建築様式を持ち、礼拝堂正面講壇と両サイドの扉のテューダーアーチ、縦長窓の三葉形アーチ、吹き抜け窓の反り曲線アーチ、ロビーステンドグラスの半円アーチなど、さまざまなアーチが組み合わされており、それ以外はほとんど装飾のないシンプルな空間を保っている。今回の改修では、オリジナルの建物の良さをできるだけ残しつつ、バリアフリー化を実現させたという。
同教会の上山修平牧師によると、高齢の信者からは「私が生きているうちに改装がなり、新しくなった教会で礼拝ができて本当にうれしい」「トイレが便利になって本当に助かる」といった声が聞かれるという。
同教会では、今回の改修を機に、毎月第3金曜日を一般公開の日と定め、地域の人々に教会を開放することも決めた。1回目の一般公開は5月15日に行われ、上山牧師によると、約50人が訪れた。半分はクリスチャンではない人々で、大変好評だったという。
同教会は、横浜開港後に渡来した米オランダ改革派教会の宣教師J・H・バラと、バラから洗礼を受けた日本人ら11人が、1872年に「日本基督公会」として設立した。最初はバラが英語教場として建てた石造りの小会堂を使っていたが、手狭になったため、75年に400人以上収容可能な会堂を建設。同時に「日本基督横浜海岸教会」と改称した。この会堂が関東大震災で焼失した後に建てられ、今回改修が終わったのが現在の会堂。
同教会の歴史資料は、関東大震災の旧会堂焼失の際に多くが失われたが、幾つかの資料については、横浜開港資料館に収蔵されている。戦中のキリスト教弾圧時代にも一度も欠かすことなく主日礼拝を守り、累計の受洗者数は推計6千人以上だという。7年後には創立150周年を迎え、上山牧師は「これからも横浜の地に根差し、横浜の人々と共に歴史を刻んでいきたい」と話している。
一般公開は、毎月第3金曜日午前10時~午後3時。午後0時10分から30分間は、教会が初めての人にも分かりやすい「昼休み礼拝」も行われる。次回は6月19日。詳細は同教会ホームページで。