和風建築の教会として知られる日本聖公会奈良基督教会(奈良市)と、赤レンガ造りの今村天主堂(福岡県大刀洗町)が、国の重要文化財に指定されることになった。文化審議会が15日、下村博文文部科学相に答申し、近く指定されることになる。
奈良基督教会
奈良基督教会は1885年、米国出身の宣教師ジョン・マキムと日本人のクリスチャンによって、奈良県では初めてのキリスト教会として活動を開始。1930年に、法相宗の大本山である興福寺に隣接する現在の場所に教会堂が建てられた。
設計は、同教会の信徒で宮大工の大木吉太郎。近隣の興福寺や奈良公園の景観に溶け込むよう、外観は瓦ぶきの屋根に真壁造りの壁面という寺院風で、内観は奈良の特産である吉野杉や檜(ひのき)を使った数奇屋風に仕上がっている。屋根瓦の一部には十字架のデザインを施すなど、日本文化を融和させた教会堂となっている。隣接する親愛幼稚園の園舎も大木の設計で、今回、教会堂と併せて重要文化財に指定される。
文化審議会は答申で、「古建築から着想を得た諸要素を巧妙にまとめ、各部のバランス、
細部意匠とも秀逸で意匠的に優れている。古社寺修理から学んだ伝統的な要素を駆使し、教会堂として完成させた昭和初期の近代和風建築として、高い価値がある」と評価している。
「平城京」として710年から794年までの間、日本の首都として機能した奈良は、当時の仏教中心の文化を色濃く伝える都市。奈良県内でキリスト教の施設が国の重要文化財に指定されるのは今回が初めてだという。同教会の井田泉司祭は、「この礼拝堂が、神様のうるわしさと栄光を仰ぎ、世界の平和と人の救いを求める祈りの場所として、さらに深く用いられることを願っています」と語った。
今村天主堂
カトリック福岡司教区の今村天主堂(カトリック今村教会)は、今村という小集落に位置しており、九州地方で多くの教会堂建築を手掛けた鉄川与助が設計した。外観はロマネスクを基調としてレンガ積みを表し、正面に八角形の双塔を据えている。内部は本格的な三層構成で、高いリブヴォールト天井とステンドグラスで壮麗な空間を演出している。
今村は、禁教令が敷かれていた江戸時代に隠れキリシタンが多く暮らしていた地域で、長崎の大浦天主堂で隠れキリシタンが見つかった「信徒発見」(1865年)の2年後に、今村でも隠れキリシタンたちが「発見」された。79年にジャン・マリー・コール神父が着任し、81年に最初の教会堂が建てられた。96年に本田保が4代目主任司祭に就任した後、教会の改築が計画され、1913年に現在の教会堂が完成した。
北九州地域では、平面規模・高さとも最大規模のレンガ造りの教会堂で、文化審議会は「鉄川与助によるレンガ造り教会堂の最も充実したものの一つに位置付けられ、高い価値を有している」と評価した。