東日本大震災で被災し、取り壊されていた日本基督教団福島教会(福島市)の会堂が、震災4年を前に再建された。昨年末に工事が終わり、1月には近隣へのお披露目も。3月21日には献堂式を行う。
来年創立130年を迎える同教会の旧会堂は、キリスト教の伝道者であり、日本各地で1500以上の建物を設計した建築家として有名なW・M・ヴォーリズが設計した。国の登録有形文化財でもあり、1世紀以上にわたって福島の地で親しまれてきたが、2011年の震災でシンボルだった鐘楼も大破するなど大きな被害を受けた。
新会堂を設計したのは、一粒社ヴォーリズ建築事務所。奇しくも、旧会堂を設計したヴォーリズが設立した会社だ。新会堂は、慣れ親しまれてきた旧会堂の面影を残すデザインで、シンボルだった鐘楼も受け継ぎ、美しいフォルムで新しく生まれ変わった。
同教会は震災後、専任だった若い牧師が去り無牧になっていたが、その年の12月、「求めがあるなら」と大阪から福島出身の似田(にただ)兼司牧師(78)が着任。翌年から新会堂建築についての話し合いや準備を始め、教会一丸となって再建に取り組んできた。昨年12月に竣工し、昨年のクリスマスイブから新会堂で礼拝が行われている。
新会堂の建築検討委員だった信徒は、「当初は戸惑いましたが100年以上の伝統ある教会の生まれ変わりにかかわる名誉ある仕事と思い携わってきました」とコメント。別の信徒は「海外、全国の教会、多くの牧師、教会員等、様々な方からのご支援を心から感謝いたします」などと、同教会のホームページ上でコメントしている。
太平洋戦争などさまざまな危機も経験してきた同教会。特に、太平洋戦争中に軍の命令で供出させられたが、戦後になって米国の戦利品となって返還された教会の鐘は「奇跡の鐘」と呼ばれ親しまれてきた。この鐘も昨年11月から設置され、以前と同じ音色を奏でている。
資金面の困難もあったが、献金を募るだけではなく、電子レンジ用調理器具や高級和紙を用いたオリジナルデザイン製品を販売して乗り越えた。似田牧師は、「良くここまで来てくれました。これからこの立派な会堂を用いてどう福音を伝えていこうか、頭が一杯です」と期待を語った。