ありのままとあるがまま①
1. はじめに
「あなたが、あなたらしい家族スタイルで満ち足りた人生をおくる秘訣」を書いたものです。
家族のきずなを求めてきた人のほとんどが、「一生懸命がんばったのに、親と心の通じ合う会話ができない」「みんなで笑い声のある食卓を囲めない。孤独を感じる」「迷惑をかけた両親に親孝行したいのに、できていない」「自分らしい家族のあり方が見えず結婚に踏み切れない」などなど、毎日イライラが絶えないのではないでしょうか?
「自己犠牲的に生きてしまい、最後は期待を裏切られる。自分の能力を上げて、がんばって外では成果が上がってきたのに、安心できる居場所がない」
もしあなたが、こんな悩みをもっておられるなら、私から見ればそれはあなたに大きな愛があるということです。その愛が素直に立ち上がり、自分らしい幸福になる秘訣を知ってほしいのです。
まず、家族に気を使ったり、家族に合わせたりすることなど、「家族のために」という生き方をストップしてみてください。今のスタイルをリセットするのです。そしてあくまでも、自分の生き方、本当にしたいことだけに集中するのです。
めっちゃワガママに! そして、自分が心からしたいことをしてみてください。いい意味で自分のために生きる決意をしてください。
これは、わがままな自己中心ではありません。なぜなら、自分を受け入れて自分を愛した分だけ、他者を受け入れて愛することができるからです。自分を大切にすることは、自分の人生を生きる第一歩なのです。
そうすると、あらあら不思議、自分の心が満たされます。心が満ち溢れると、相手を受け入れやすくなるのです。そして、あなたが求めておられたお互いを認め合うすてきな関係が始まります。
仕事も家庭も人生がうまくいき始めるのです。
1章 あるがままの人生で本当にすべてが良くなった!?
1. あるがままの自分でいいのです。執着を手放してあるがままに受け入れていけばいいのです。
まず、あなたがありのままの自分を承認するとは、あなたのありのままを「いい」「わるい」とジャッジせずに受け入れることです。あるがままの自分を承認することが大切です。すると、家族や人をあるがままで受け入れることができるのです。
フィギアスケートの鈴木明子さんは、自分の容姿に対する劣等感で自分を受け入れることができず、痩せることにこだわり減量にがんばったようです。そして、とうとう160センチほどの身長に32キロの体重まで落ち込みました。いわゆる拒食症になりました。元来がんばり屋さんでしたので、自分責めで精神的にひどく落ち込んで練習どころではなくなったのです。あるとき、長久保裕(ひろし)コーチといっしょにTVで荒川静香さんが国際大会で優勝するシーンを見て、一言鈴木さんは「荒川さんのように国際舞台で活躍したい!」と言われたそうです。
その機を逃さず、長久保コーチは軽くぽそっと言ったのです。「入賞できるよ。誰がコーチをしていると思う。わたしの眼には、あなたがオリンピックで活躍している姿が見えている」と、そのコーチの一言で、一瞬で自分のとらわれていたものから解放されました。
鈴木さんは、きっとこう思ったのでしょう。「このすばらしいコーチが私にはいる! このコーチを信じていけば、自分の容姿へのとらわれは気にしなくても大丈夫!」
鈴木さんは、自分の長らくこだわっていたものを手放すことができ、あるがままになれたのです。自分の今の容姿をそのまま否定せずに受け入れたのです。そして、鈴木選手はふたたび練習に打ち込みました。長久保コーチの軽やかでそのままの鈴木さんを承認する言葉が、鈴木さんをあるがままにさせ、再起させたのです。
私たちも、何かの価値観にとらわれて、「変なガンバリ」をしてしまっているのです。
2. あるがままって、自分の喜びに集中すると、まわりの人によい影響を与えるものなのです。
人が「気を使う」とは、「相手にコントロールされている」状態なのです。気を使えば使うほど、本来のあなたの生き方からずれて、心も体も無理をするのでストレスがたまります。それは、演じる人生、すなわちバーチャルな人生になってしまうのです。気を使うことをやめて自分の本心に集中してリアルに生きると、自分が生き生きとしてきます。
私も一時期、家族に喜んでもらおうと、皿洗いをしたり、洗濯をしたり、休日は家族に合わせて家族のしたいことに付き合っていたことがありました。でも本心ではないので、感謝されなかったり、マイナスの言葉を聞くとイラッとしたりするのです。
ある休日、家族が書店に行くといったとき、私は自分の見たい映画を見た後、合流することにしました。そのあとの会話も食事も自然な喜びに包まれ、とてもハッピーな休日を過ごすことができました。
私の言葉の定義
●ありのまま
長所も短所も、過去の傷も成功も、すべてそのままの状態を指し示す。漢字では「有りのまま」と表すように、起こっている事実をいっさいの善悪基準で決めつけずにいること。すなわち、自分のことも相手のことも、起きている事象も自然も、事実のままに見ることです。
●あるがまま
漢字で「在るがまま」と書く。人間には、本来のあり方があり、個々の人間には個々の特性がある。人間の内にある宇宙、そして人間を囲む天と地と人の関係の中にある天からの宝を、そのまま認識できる存在になっていく。自分の中にある偽りを認識し、ありのままを受け入れてみると、本来の姿が立ち上がってきます。それをあるがままといいます。
●手放し
人をジャッジして分けへだてる私だけのルール、時には偏見とも色メガネとも言いますが、それに気付いてリリースし、リセットする状況を指します。行動から存在に移る瞬間です。
●自律
人は、生まれながらにして、家系の文化からくる価値観、社会の価値観、他者の価値観に縛られています。価値観に縛られると、気になる、恐れる、イライラするなどの行動にいびつさが表れます。高じると、許せない、恨む、憎む、呪うといったブラックな思いにコントロールされます。縛られた価値観に気付いて手放し、あるがままになって、自分の価値によって魂の自由を味わっていく生き方を指します。
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田路俊章(たじ・としあき)
1953年生まれ、大阪育ち。オーサカ・ユニーク株式会社前社長、ラジオ大阪「VIPアワー」パーソナリティー(2005年11月~07年3月)、経済産業省登録コンサルタント、CBMC理事(2000年、国家朝餐祈祷会を発起)、VIP関西発起人兼元副会長。2015年2月、経営と家族のコンサルタントとして株式会社家族授業を設立。