ありのままとあるがまま③
2章 あるがままに生きるそのヒケツ♪
ここからは、私が体験し、またセミナーを受けてくださった方々が短期間で変わられた「あるがままに生きるための秘訣」を順序立てて語りたいと思います。
1. 家族のために生きることをやめて、一度、自分のために生きてみてください
あるとき、紳士服の売り場でステキな初老の女性店員が、親切な対応をしてくれていました。
おしゃれの話で盛り上がる中、私が「がんばってお仕事されていいですね」と言いますと、彼女は「いえいえ、私内面は、今迷いだらけなのです。私は、今まで主人と子どものためにがんばって犠牲的に生きてきました。そして、今は孫のために走り回っています。ここにきて、私の人生はこれで良かったのかと。年齢とともに疲れて枯れてきているように感じます。何のために生きてきたのか分かりません・・・」と。
ちょっとヘビーな話に驚きましたが、これは他人事ではありません。いくつになっても、子どもの時に植え付けられた価値観、女性は特に、親のため、主人のために尽くすことを強いられ、いつの間にか自分の価値観と勘違いして、犠牲的に生きてしまうのです。家族のためだからといって、結局は自分の承認を求めていることが多いのです。自己犠牲を早く卒業してくださいね。
いい人症候群はどんどんあなたを犠牲的な生き方へと追い込んでいくのです。そして「家族のためにこれだけしているのに!!」と心がイライラするのです。あなたの愛は、深いので、もっと家族のためにと自分を追い込んでしまうのです。そんなに自分を責めなくていいですよ。あなたの愛は十分です。それより、あなた自身を大切にしてください。
2. 親孝行の思いは、意外と家系からくる縛り・・・親孝行をやめてみると人間として、個として、親が見える
そうなのです。「自分が犠牲になって相手に尽くす」ことは意外と親からくる価値観が囚われになっている場合が多いのです。親も祖父母から同じような教育を受けてがんばってきたのです。それはあたかも、家系から面々と流れているのろいのようです。それをあなたが手放してみてほしいのです。自分を生きてみるのです。あなた独自の価値観を築いていく人生を始めるのです。
「ちゃんと勉強して、ちゃんとした学校に入り、ちゃんとした会社に入り、ちゃんとした結婚をしなさい」と言われ続けてきた女性が、いつも大学のランクで人を見て、偏差値の高い大学の学生には劣等感を感じ、偏差値の低い大学の学生には優越感があったそうです。偏差値だけで人を差別していたようです。
この両親の価値観が気になって、あなたにとってマイナスを引き起こしているのです。この価値観の縛りに気付くだけで、手放せるのです。そして、新たな生き方が立ち上がるのです。これこそ、人生最大のテーマかもしれません。そのままでは、あるがままの生き方ができないのです。
いつも人に承認を求める生き方になるのです。大概の場合、男性は外的成功に走り、女性は共依存的な縛りに拘束された生き方になりがちです。どちらも他人の承認を求めているのです。そこには心の平安はありません。絆が見かけだけになるのはこのせいです。
親の価値観での生き方から新たな自分らしい生き方に移行したすばらしい事例を紹介します。医療関係の仕事をされる30歳代男性Nさんです。
私は、医療関係に勤めるビジネスマンです。「真面目がとりえで、人のために尽くしたい。でも何かみんなと足並みをそろえることができない・・・」。そんな、「なんだか人生うまくいっていないな」と思う日々の中、ご縁があって田路さんのセミナーを受講させていただく運びとなりました。
セミナーの中で、ありのままを受け入れる方法を学び、実践しました。最初はうまくいきませんでしたが、次第に自分のありのままを受け入れるようになってきました。
最大の変化は、両親から受け継いだ価値観、もしくは縛りともいうべきものを背負い、無意識のままに生きていたことに気付かせてもらいました。簡単に言うと、“親を喜ばせる、満足させるための息子を演じ続ける人生”です。
「両親から受け継いだものを、いったん手放しましょう」。田路さんのセミナーを受講し、しばらくしてから言われたのがこの言葉でした。手放しを目的としたセミナーが始まりだすと、“私の中のもう一人の私”に問いかけるように質問・ワークが続きます。そして、その一つ一つが私にとって、あつらえられたもののようでした。
そんな数々の質問の中から、「人と視点が違う自分がいい」という価値観と「母がどう思うか・母からの承認が目的の人生」という依存が浮き彫りになりました。
あらためて浮き彫りとなったことで、今まで生きてきた中での出来事が走馬灯のように頭の中を巡り、紡ぎ合わさりました。この二つが、私のすべての行動指針となっていたのです。
そしてもう一点、田路さんがのろいと言われていた意味も分かりました。この価値観と依存が、恐ろしいことに、オートマチック、無意識に判断し行動へと導かれるということだったのです。「足並みをそろえられない自分」「真面目な自分」、そして「尽くしたい自分」がいる理由に気付けました。
今、無意識で判断をすることがなくなったため、いろんな考えの人がいることをより理解できるようになり、そして両親を一人の個として接することができるようになりました。人との距離が近くなったと思います。
これから、本当の私の人生が始まります。毎日毎日が楽しみです。
まだまだ先の道は長いですが、この時代に生きていく家族スタイルを模索したデザイン帖として言葉をつづりました。いかがでしたか。人それぞれの家族スタイルがあってそれを見つけてほしいのです。
それは皆さんにとっても変わらないものだと確信しています。血がつながっていようと、つながってなかろうと、心がつながる家族は喜び合いの基地、人が人として生きる基盤です。家族がいないのですと不安にならないでください。血のつながりだけが家族ではありません。自律した心の友は、真の家族です。あるがままの存在を受け入れ合って、存在そのものを喜ぶ。それが家族です。
私も、大きな問題でどうしようもない時に家族のような友人たちのおかげでどん底から這い上がれました。あなた一人があるがままになれれば、天も天使もみんなみんなあなたを応援してくれていることが分かります。そして、血のつながりを越えた素敵な心の友があなたの周りにもいます。
見つからなければ、私があなたの家族ですよ。あなたの人生が愛する人を大事にして悔いのないものになりますように。祈りを込めて。
私の言葉の定義
●ありのまま
長所も短所も、過去の傷も成功も、すべてそのままの状態を指し示す。漢字では「有りのまま」と表すように、起こっている事実をいっさいの善悪基準で決めつけずにいること。すなわち、自分のことも相手のことも、起きている事象も自然も、事実のままに見ることです。
●あるがまま
漢字で「在るがまま」と書く。人間には、本来のあり方があり、個々の人間には個々の特性がある。人間の内にある宇宙、そして人間を囲む天と地と人の関係の中にある天からの宝を、そのまま認識できる存在になっていく。自分の中にある偽りを認識し、ありのままを受け入れてみると、本来の姿が立ち上がってきます。それをあるがままといいます。
●手放し
人をジャッジして分けへだてる私だけのルール、時には偏見とも色メガネとも言いますが、それに気付いてリリースし、リセットする状況を指します。行動から存在に移る瞬間です。
●自律
人は、生まれながらにして、家系の文化からくる価値観、社会の価値観、他者の価値観に縛られています。価値観に縛られると、気になる、恐れる、イライラするなどの行動にいびつさが表れます。高じると、許せない、恨む、憎む、呪うといったブラックな思いにコントロールされます。縛られた価値観に気付いて手放し、あるがままになって、自分の価値によって魂の自由を味わっていく生き方を指します。
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田路俊章(たじ・としあき)
1953年生まれ、大阪育ち。オーサカ・ユニーク株式会社前社長、ラジオ大阪「VIPアワー」パーソナリティー(2005年11月~07年3月)、経済産業省登録コンサルタント、CBMC理事(2000年、国家朝餐祈祷会を発起)、VIP関西発起人兼元副会長。2015年2月、経営と家族のコンサルタントとして株式会社家族授業を設立。