オーストリアにあるルーテル教会のミヒャエル・ブンケル監督は10日、カトリックの援助・福祉団体「カリタス・オーストリア」のミヒャエル・ランダウ会長や、ウィーンにあるギリシャ正教会のアルセニオス・カルダマキス府主教と共同で、同国北部にあるナチス・ドイツのマウトハウゼン強制収容所とその附属収容所からの解放70周年を記念しようと、同強制収容所跡でエキュメニカル礼拝を行った。オーストリア福音主義教会が公式サイトで伝えた。
「この記念は、犠牲者たちを決して忘れてはならず、決して幕引きをしてはならないと命じるものとなった」と、オーストリア・アウグスブルク告白福音教会のブンケル監督はこの礼拝で語った。1945年5月5日にこの収容所は米陸軍によって解放され、今年解放70周年を迎えた。
「マウトハウゼンにおける強制労働は、エジプトで奴隷にされたイスラエルの民の強制労働を思い起こさせるものとなった。彼らの出エジプトは、聖書的な解放の体験の核心を描くものであり、それは今もなおユダヤ教とキリスト教において一定の位置を占めている」と、オーストリア福音主義教会は記している。
「この聖書的な記憶は今日も常にしなければならないことである」とブンケル監督は述べ、「今日、これはアジアの繊維工場における状態や、南側諸国の児童労働、女性の人身売買や売買春など、あらゆる形の強制労働に反対する姿勢を意味する」と語った。また、「自由と人間の尊厳、そして人権のメッセージは、沈黙させることはできないし、またそうしてはならない」と強調した。
ランダウ会長はこの礼拝で、「もし私たちが今日、犠牲者たちを共に追悼するのであれば、私たちはこう付け加える必要があるだろう。『教会は絶望(する人たち)の声のために自らの声を十分に上げなかった』」と指摘。マウトハウゼンでの強制収容が可能となったのは、「抵抗する勇気を持つ人たちがほとんどいなかったからだ。クリスチャンも傍観しては(強制収容に)加わってしまった」と語った。
マウトハウゼン委員会のビリ・メルニイ委員長は、この礼拝について、「ナチスの恐怖政治の犠牲者たちを追悼するための機会であるだけでなく、あらゆる形の不寛容や独裁、外国人嫌悪、反ユダヤ主義に対する意思表示でもあり、過去および現在の犠牲者たちとの連帯を記念するものでもあった」と語った。
この記念と解放の祝祭は、2006年から毎年、マウトハウゼン強制収容所の歴史またはオーストリアにおけるナチス・ドイツの過去に関連する特別な主題のためにささげられている。今年の催し物は、「採石と強制労働」という主題の下に行われた。戦時、同収容所に収容された人たちは、当時マウトハウゼンにあった同国最大の花こう岩採掘場で採石のために働かされていた。