日本聖公会主教会は3月27日、復活日の日付が記された「“戦後70年”に当たって」と題するメッセージを公式サイトで発表した。同主教会は冒頭で、「わたしはあなたを国々の光とし わたしの救いを地の果てまで、もたらす者とする」(イザヤ49:6)という旧約聖書の一節を引用。戦後70年たっても戦争の傷はいまだに癒えていないとし、特に日本が侵略した国々との和解と平和がいまだに実現していないことを、反省と痛みをもって覚えるとした。
「戦後70年に当たり、わたしたちはこの戦争で犠牲になった人々、また、今もその痛みや苦しみ、悲しみの中にある人々のために祈ると共に、世界の平和に向けての日本聖公会のあるべき姿を改めて確認したいと思います」。同主教会はこう述べた上で、日本聖公会の戦争責任や東日本大震災、2012年の日本聖公会宣教協議会で出された「日本聖公会<宣教・牧会の十年>提言」などに言及した。
日本聖公会は、1995年に「日本聖公会の宣教―歴史への責任と21世紀への展望」を主題に、日本聖公会宣教協議会を開催。翌年には第49定期総会で、戦争責任に関する宣言を採択した。その後も、アジアにおける各聖公会との協働関係を築くことに努め、沖縄における平和と人権問題への関わりを推し進めてきた。
今回のメッセージでは、南北朝鮮の平和統一を含む東アジア全体の平和と和解、沖縄における平和の確立が今後の大切な課題だとし、その実現のために努力を続けていくとしている。
一方、ここ数年の日本の政治情勢について、特定秘密保護法の成立や集団的自衛権の行使容認、憲法改定の動きなどを取り上げ、「日本の再軍事化への動きが加速されています」と述べている。さらに、沖縄の米軍基地固定化、韓国・中国との関係悪化などを挙げ、「平和や安定が脅かされる状況が生まれつつあります」と危機感をあらわにした。また、福島第一原発事故の放射線汚染の深刻な状況や経済的格差の広まり、ヘイトスピーチによる人権侵害、世界各地の戦争や紛争など、さまざまな社会問題・国際問題に言及した。
その上で、「そのような状況であるからこそ、戦後70年を迎えたわたしたちは、これまでの歴史から、また主イエスの福音から学び、いのちを輝かせる働き、隔ての壁を取り除き、分かたれたものを一つにする平和の器として歩んで行く思いを新たにするのです」と、同主教会は述べている。
最後には、新約聖書のヨハネによる福音書17章21節と20章21節を引用しつつ、「平和のしるし・和解の器として」と題し、「戦後70周年に当たり、わたしたちは主に在って一つであることが“平和のしるし”となることを覚えます。そして『日本聖公会の戦争責任に関する宣言』や『日本聖公会<宣教・牧会の十年>提言』に掲げられている取り組みを丁寧に実践し、主キリストの十字架の死と復活によって示された和解と平和を告げ知らせて行きたいと願います」とメッセージを結んでいる。
日本聖公会管区事務所の矢萩新一総主事によると、このメッセージは3月24日に日本聖公会の各教会に送付されたという。通常は毎年8月15日に平和メッセージを発表しているが、今年は戦後70年の節目であるため、イースター(復活祭)に向け早めに発表したという。