イエズス会社会司牧センターとカトリック麹町聖イグナチオ教会が共催する2015年度連続セミナー「第二バチカン公会議と《今》」の1回目が15日、聖イグナチオ教会アルペホール(東京都千代田区)で開かれた。カトリック教会に大きな変革をもたらした第二バチカン公会議が閉幕して50年目を迎える今年、公会議の最後に宣言され、現代世界に対する教会の態度を示した『第二バチカン公会議 現代世界憲章』(2014年、カトリック中央協議会発行)を読み進める。当時の歴史的背景を振り返りながら、現代の教会のあり方について、1年を通して考えていくセミナーだ。初回は、イエズス会社会司牧センターのボネット・ビセンテ神父が、現代世界憲章の序文を取り上げ、「当時の教会と社会、対決から深い連帯へ」と題した講演を行った。
第二バチカン公会議は、1962年10月11日~1965年12月8日の期間に4会期に分けて開かれた、カトリック教会の第21回目の公会議だ。この公会議の期間中、全体で16の公文書が採択され、ローマ教皇によって宣言された。史上初めてオブザーバーとしてプロテスタント諸教会、東方正教会関係者の参加が要請され、その最後に出されたのが現代世界憲章。16の公文書の中で唯一、教会外の世界に向けた内容の文書だ。
「現代の人々の喜びと希望、苦悩と不安、とくに貧しい人々と全ての苦しんでいる人々のものは、キリストの弟子たちの喜びと希望、苦悩と不安でもある」という一文から始まる序文は、2ページほどの長さしかない。しかし、「教会と全人類家族との親密なきずな、公会議が話し掛ける相手、人間に提供すべき奉仕」に言及し、それまでのカトリック教会の世界に対する態度が大きく変化したことを明らかに示しているという。
ボネット神父は、第二バチカン公会議以前のカトリック教会を、「教会を中心にした教会」と表現する。313年にキリスト教がローマ帝国の国教と認められてから、カトリック教会の世界に対する態度は、カトリック教会と諸国家、諸教会との関係において、「対立」を引き起こすこともあったという。病院運営など、現代の社会福祉の原型ともいえる活動を主導して行い、ハンセン病患者をケアし、奴隷制度を批判するなど、評価すべき点はもちろん数多くある。だが、ボネット神父は、政治権力と結び付いたカトリック教会の絶対的権威が、「人間の自由は神によって制限されており、カトリック教会が唯一正しい」という考え方を生み、良心の自由や出版の自由などを批判してきた事実を指摘した。20世紀以前のカトリック教会には、人々を教え、人々に考えを押し付け、それを受け入れないものは排除する態度があったという。
それでも教会がつぶれることなく続いているのは、気付きと悔い改め、真理に近づいてきた歩みがあるからだと、ボネット神父は話す。変わらなければならないという意識を持って開催された第二バチカン公会議は、カトリック教会のあり方、教会と世界の関係に、素晴らしい変化をもたらしたと評価する。序文には、カトリック教会の世界へ対する見方が、「悪い」というものから、「神の希望のもとで変容していく」ものだという見方に変わり、その世界に対して「連帯、尊敬、愛を証明」するために、「対話」が必要であると記されている。
カトリック教会と世界の関係が、「対立」から「対話」へと変わってから50年。現代世界憲章で宣言されたことが、今を生きる自分の心にどれだけ響いているか、どれだけそれを実行できているか、と自問してやまないと言うボネット神父。「みなさんはどう受け取られるだろうか」と参加者に問い掛けた。
この連続セミナーでは、来年2月17日まで、全15回にわたって現代世界憲章を手にしながら、学びを進めていく。現代世界憲章が宣言された当時には取り上げられなかった、女性に関する問題、世界司教代表者会議(シノドス)で扱われた家庭の問題、現教皇フランシスコの『福音の喜び』や、新しく出される予定のエコロジーについての回勅などについても触れられるという。
公会議の文書は、堅い言葉で書かれており、一文が長く、読みにくいと感じる人も多い。しかし、このセミナーでは、読み慣れていくとともに、聞き流すのではなく、そこにある深い意味を見逃すことなく読み取っていく。ボネット神父は、「分からない部分を質問できるように、ぜひ前もって憲章を読んで参加してほしい」と呼び掛けている。
2015年度連続セミナー「第二バチカン公会議と《今》」の詳細はこちら。問い合わせは、イエズス会社会司牧センター(電話:03・5215・1844)まで。参加無料、申し込み不要。