東京のライブハウス「四谷OUTBREAK」で20日、「牧師ROCKSvs坊主バンド」が行われた。当日会場には両バンドのファン約130人が詰め掛け、ライブハウスは満員となった。
両バンドの「対バン」は今回で5回目。毎回、斬新だと話題になるポスターのデザインは、ブッダとイエスが東京・立川でバカンスを楽しむギャグ漫画『聖(セイント)☆おにいさん』の公式ツイッターで「リアル聖おにいさん的な」とリツイートされるなど、今回も話題になった。
牧師ROCKSは、2013年にルーテル教会の牧師と神学生(当時)で結成。教会ではなく都内のライブハウスに現れては、毎回200人余り収容できる会場をオーディエンスで埋め尽くす。関野和寛牧師、市原悠史牧師と、この春から牧師となった笠原光見さん、関満能(みつちか)さんの4ピースロックバンドだ。「全員牧師になったので、『真』牧師ROCKSです」と笑顔で語る笠原さん。
ロックという音楽を武器に、教会の境界を“ぶっ壊す”彼らだが、対バンはそのチャレンジの結果を如実に物語る。関野牧師は本紙とのインタビューで、「(対バンは)直感で始めたのですが、彼ら(坊主バンド)と話をしているうちに同じ意識を持っているんだと感じました。最終的に布教とかそういうスタンスじゃなくて、行動を通して『信仰のルールじゃなくて、自由さと豊かさ』を示す形になった」と話す。
一方、この日激突した坊主バンドは、東京・四谷の坊主バーのメンバーで構成されたコミックバンド。「もともと音楽好きなお坊さん同士で始めたバンド。(対バンをするようになって)大変反響も良く、お客さんも集まります」と言う。
彼らのパフォーマンスは、ガガガSPなどがカバーしたことで知られる歌謡曲「自衛隊に入ろう」をモチーフにしたテーマ曲「お寺へ行こうよ」など、グレーゾーンすれすれ(?)のパフォーマンスに定評がある。この日もMCでもお得意の“禅問答”で、素朴な疑問を線香の煙で巻いていく。
当日は、まず初めに牧師ROCKSが登場し、9曲を熱唱。途中ベースが故障するも、「坊さんディスリ(disrespectから転じて相手のアーティストを批判すること)過ぎて、たたりでベースが壊れちまった!!」と関野牧師。坊主バンドも「楽屋で『ベース壊れろ』と念仏唱えてました」と、対バンらしいMCで観客を沸かせた。
対して坊主バンドは「このライブは異種格闘技のようなもの。牧師ROCKSのようなもんが出てくると思ったら大間違い」とアナウンス。アコースティックギターに和太鼓や木魚などを駆使しつつ、日本の宗教文化に根ざした絶妙なあるあるネタで終始笑いを誘った。
ライブ後はスポーツマンシップならぬ、“宗教マンシップ”にのっとり、固く握手して、さい銭ならぬ再戦を誓う両バンド。関野牧師はライブ後、バンドのブログで、「一応、坊主の呪いで機材が壊れたことにあの日はなっていた。だが慌てて楽屋に戻ると、坊主たちは本気で俺を心配してくれていた」と明かし、「一音が出る奇跡、そして音を重ねることができるメンバーがいること、そして他宗教者が注ぐ慈悲。四谷の地で俺は無力感と人々の憐れみに飲み込まれた・・・」と、相手の成功を祈り案じる姿勢への尊敬や、共闘できる仲間がいる喜びをつづった。
牧師ROCKSは現在、初のフルアルバムCDを制作中。ついにメンバー4人全員が牧師になった「真」牧師ROCKS。限界を“ぶっ壊す”彼らの伝説はまだ始まったばかり。