牧師といえばどんなイメージを持っているだろうか?そのイメージは千差万別だろうが、日本にもこんな“クレイジー”な牧師たちがいる。彼らは「牧師ROCKS」。都内のライブハウスに現れては、200人収容の会場をオーディエンスで埋め尽くす。CDはもちろんプロモーションビデオも出しており、現在精力的に活動している。牧師ROCKSは2013年に結成。今回はベースの関野和寛さんに話を聞いた。
「最初は伝道しようとか、そんなことを考えず、バンド好きな者同士でやり始めたのがきっかけ」。活動の動機を関野さんはそう話す。「楽しいと思って練習を続けていると、教会のイベントに出てもっと楽しくなったし、クリスチャンじゃない人も喜んでくれたので現在も続けている」という。
バンドのメンバーは牧師か神学生。関野さんも、普段は日本福音ルーテル東京教会の牧師を務め、教会運営を行っている。牧師というと、ステレオタイプなイメージがあるという。教会に対するイメージも同じで、時々一般の人から「クリスチャンじゃなくても教会って入っていいんですか?」と質問を受けることもあるそうだ。
「本当は何でも相談していい人だし、日常的に関わる人であるべきだけど、双方向にうまくいってないというか、何か見えない壁みたいなものを感じることがあります。牧師たちもその壁を作りたくて作ってるわけじゃないのですが・・・」と関野さん。「元々は『楽しもう』としか考えてなくて始めたバンド活動ですが、活動を続けていて『壁の存在』を認識し、結果的に取り払う働きになっていた」と、自分たちの活動を神様が使ってくれた喜びをあらわにする。
教会の音楽も、日本の市場では馴染みがあまりない。牧師ROCKSは、「固くならないこと、常識に囚われないこと、牧師だから“こうしよう”とか、“こうするべき”と限定しないこと、気負ったものを可能な限り取り払うこと」と考えている。
そんな関野さんは、牧師ROCKSの発信するメッセージについてこう語る。「賛美歌などで使われている言葉は、格調が高過ぎて心に入ってきにくいし、若者が集まるゴスペルはテンションが高過ぎて一歩引いてしまう人もいる。それでは心に届かないと思い、僕たちは日常で格好いいと思うキリストを、生の言葉と大好きなロックで、無理せず、気負わず、表現するようにしています」
その結果、牧師がバンドをやってることで、どちらかといえば、クリスチャンよりもそれ以外の人たちが喜んでくれているということが見えて、「求められている」と感じるようになったという。「一般の方が教会には『入りにくい』とか、牧師に親近感を抱けないと思ってしまってるなら、『ご自由にお入りください』と看板出して、日曜日の礼拝と聖書研究だけでデンと構えて待っている教会の時代は終わったのだと思います」と話す。
今ではライブを終えた後、「懺悔を聞いてよ」と声を掛けてくれるファンもいる。「彼らだって出会いを求めてるんだと思います。そこで『聖書を読みなよ』とか、信仰の話をいきなりしたって多分関係は築けない。僕はそんな人と一人の友達として話すように心掛けています」と言う。
このようにファンとの絆を大切にする一方、牧師ROCKSは仏教系バンドとの“対バン”も数多く行っていることでも知られている。「これも直感で始めたのですが、彼ら(相手のバンド)と話をしているうちに同じ意識を持っているんだと感じました。最終的に布教とかそういうスタンスじゃなくて、行動を通して『信仰のルールじゃなくて、自由さと豊かさ』を示す形になった」と経緯を話す。
これからの展望については、「できるだけ多くの人と出会いたい。とりわけクリスチャンじゃない人と出会いたい。教会外の人々の日常の魂に触れたい。そしてこちらから何かを教えるのでも、押し付けるのでもなく共鳴したい」と話す。
「教会じゃなくてライブハウスで演奏することによって、老若男女、色んな宗教の人が集まって、いたる人が一緒になって喜んでいるのが嬉しいです。イエスが生まれたとき、キリストと最初に出会ったのは東方から来た賢者。つまり、異宗教の信仰者でした。服装や曲調など『今までの牧師と違う』と批判されることもありますが、今までの文化と同じことをやっていれば批判はされないけど、何も発展もしない。僕たちは伝統を壊したくてやってるのではなく、神様の教えというのは束縛じゃなくて、最終的には人を自由にする。それを伝えたいのです」
そんな牧師ROCKSは、地球の裏側のブラジルでも紹介された。「日本のクリスチャンはマイノリティで、その中で聖職者はさらに少数。そんな人が挑戦しているのが海外では新鮮と受け取ってくれるようです。これからは英語版もつくって世界に発信し、多くの人と交わる活動を続けていきたい」と今後の展望を明かしてくれた。
■ 牧師ROCKSのプロモーションビデオ: