国際基督教大学(ICU)と上智大学が昨年12月20日に開催した国際シンポジウム「ナショナリズムを超えて?–アジアにおける平和構築と宗教–」の録画記録が、同シンポジウムのウェブサイトで公開されている。
このシンポジウムは、「アジアの中でナショナリズムの台頭に対抗するために何ができるだろうか。もしできるならば、地域の平和構築において異教徒間の対話はどのような役割を果たし得るだろうか」という問題を提起することによって、アジアにおける平和の可能性を批判的に検討したもの。
録画記録の公開期間は、同ウェブサイトでは1月までと書かれているが、シンポジウムを上智大学グローバル・コンサーン研究所と共同で開催したICU社会科学研究所によると、希望者が多ければその期間を2月以降にまで延長することもありうるという。
シンポジウムのセッション1の全部とセッション2の後半は英語、セッション2の前半は日本語で、録画記録には通訳の音声は含まれていない。
シンポジウムでは、ICUの日比谷潤子学長が開会の辞を述べた後、ICU社会科学研究所所長のジョルジオ・シャーニー氏がシンポジウムの概説をした。その後、「ナショナリズムを超えて?タゴールと現代インド」をテーマにしたセッション1が、毛利勝彦氏(ICU教授)の司会で行われた。米コロンビア大学教授のスディプタ・カヴィラジュ氏が、「タゴールと批判的ナショナリズム」と題して基調報告を行い、シャーニー氏が討論者としてこれに応えた。
午後に行われたセッション2は、その前半が「安倍政権下の日本のナショナリズム」をテーマに、寺田俊郎氏(上智大学教授)の司会で行われた。まず初めに、ICU平和研究所所長の千葉眞氏が、「岐路に立つ日本政治と東アジアの将来:憲法破壊、靖国ナショナリズム、平和構築の課題」と題して基調報告を行った。その後、上智大学教授の中野晃一氏が、「日本における歴史、政治、アイデンティティ」と題してもう一つの基調報告を行った。そして、ICU教授の稲正樹氏と木部尚志氏が討論者としてこれらに応えた。
後半は「北東アジアにおけるナショナリズム、宗教、平和構築」をテーマに、ICU教授のヴィルヘルム・フォッセ氏の司会で行われ、4人の研究者が報告を行った。
最初の報告者である韓国・崇實(スンシル)大学校准教授のカク・ジュニョク氏は、「互恵的非支配の宗教ナショナリズム:安昌浩(アン・チャンホ)の人道的コスモポリタニズム」と題して報告した。2人目の報告者は、英キングストン大学准教授の一條都子氏。一條氏は「転覆と抵抗の契機:日本帝国におけるナショナリズム / 帝国主義思想の意図しない帰結」という報告を行った。
3人目の報告者である清水耕介氏(龍谷大学教授)は、「仏教、理性、大東亜共栄圏:戦前期の日本における多文化主義とナショナリズム」という報告を行った。そして最後の報告者である出口剛司氏(東京大学准教授)は、「日本の近代と二つのナショナリズム:権威主義的独裁とナルシシズム的攻撃性」という報告を行った。
これら4つの報告に対し、木部教授と同じくICUのソー・ジェジョン上級准教授が討論者として応答した。
2つのセッションの後、上智大学教授でイエズス会神父のホアン・アイダル氏と、ICU上級准教授のロ・ウンソク氏が共同の祈りを行った。そして最後に、上智大学グローバル・コンサーン研究所の長谷川ニナ教授が閉会の辞を述べ、シンポジウムは終わった。
■ セッション1
■ セッション2