【CJC=東京】西欧各国で何百ものキリスト教会が、信徒の減少により閉鎖されたり閉鎖の危機にさらされていることを、米紙「ウォールス・トリート・ジャーナル」が取り上げた。キリスト者の減少は西欧全域で見られ、地域共同体だけでなく、各国政府に対しても問題を突き付けている。
全体で見ると閉鎖された教会の数はまだ少ないとはいえ、国によってかなり差がある。英国では、国教会が毎年約20カ所の教会を閉鎖している。デンマークでは、およそ200教会が存続不可能とみられている。ドイツのカトリック教会はこの10年間で515教会を閉鎖した。極端なのはオランダ。同国のカトリック教会は、現在の1600教会の3分の2が10年以内に活動を停止するとみている。プロテスタント教会も700カ所が4年以内に閉鎖されそうだ。
こうなると、教会の問題にとどまらない。かつては住民にとって聖日のミサや礼拝の場所であり、共同体のよりどころであったが、今は空っぽになってしまった教会堂をどうすべきかという問題にもなっている。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、オランダのアーネムにあるスケート場を紹介している。もともとは「聖ヨゼフ教会」で1000人もの信徒の祈りの場だった。それが閉鎖され、スケートホールに「リインカーネーション」(再生)した。取材した日の夜、二十数人のだらしない格好をしたスケートボーダーたちが危険なジャンプを始めた。イエス・キリストの肖像画と聖人の石像に見守られながら。
ただこのスケート場も長続きしないかもしれない。かつて厳かな雰囲気を持っていたこの教会堂には水漏れがある。このため修復が必要で、市はスケーターたち(ないしスケート場の運営者)に税金を請求している。一方で、今も教会堂を保有しているカトリック教会は、スケーターたちが出すのは到底無理な金額で建物を売却する構え。このスケート場のような窮状は、西欧各地で見られる。長年キリスト教が信仰されてきた西欧が、どんどん非宗教的になりつつあるからだ、とウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。
他の宗教もキリスト教と同じ傾向をたどっているわけではない。欧州で優勢な正統派ユダヤ教は、比較的安定を維持している。イスラム教は、アフリカや中東のイスラム国家からの移民が増えていることを背景に、信者を増やしている。
ウール・ストリート・ジャーナルは、米国について、今のところ教会閉鎖の波を回避できているという。しかし、宗教研究家たちは、米国で教会に通う人が減っていることは、米国も将来同じ問題に直面する可能性があることの表れだと指摘する。