トルコ政府は3日、最大都市イスタンブール郊外にキリスト教の教会を新設することを許可したと明らかにした。フランス公共ラジオが報じ、日本でも共同通信などが伝えている。
この報道は、同国のアフメト・ダウトオール首相が同日、イスタンブールで宗教指導者たちと会談した直後になされた。
同国にはギリシャ正教やアルメニア正教、カトリックなどの教会が存在し、修理や改築は認められてきたものの、新設が認められた例はなかった。新たな教会建設が認められるのはオスマン帝国滅亡後、1923年にトルコ共和国が建国されて以来初めてだという。
同国は2005年10月から欧州連合(EU)への加盟交渉を進めており、この動きは、EU加盟実現に向けて、少数派の権利拡大に取り組む姿勢を強調する狙いがあるとみられる。
人口約7500万人で国民の99%がイスラム教徒の同国には現在、約10万人のキリスト教徒が住んでいる。キリスト教人口はイラクとシリアでの戦闘のために、近年増加しているとみられている。
昨年8月に初の国民直接投票による大統領選挙が行われ、レジェップ・タイイップ・エルドアン氏が選出された。だが、公正発展党(AKP)出身のエルドアン政権が、政教分離を掲げていながら、イスラム教色を強めているとの声が上がっている。
歴史的に見れば、トルコは政府の統制下で、公共の広場での宗教活動を禁じ、西洋化や世俗化を取り込んできた。しかしながら、その一方でイスラム主義系党の流れを持つAKPが、中東および他のイスラム教国家と提携することに努めており、依然としてイスラム教の持つ力は強く、キリスト教などの少数派は攻撃の対象となることが多い。
トルコ国内でも、2013年7月のラマダンには、ハギア・ソフィア博物館(キリスト教会の大聖堂を起源に持つ建築物)がイスラム教徒の礼拝所として使用され、最近も、古代ビザンティウム教会のモスクへの変換が、キリスト教の過去を消し去ろうとしているのではないか、と批判された。
今回、教会の新設許可を得たのは、少数派シリア人のための教会で、すでにギリシャ正教、アルメニア正教、カトリック教会の会堂があるイスタンブール郊外、マルマラ海岸のイェシルコイに建設される予定だという。同国の南東には、2万人弱の古代シリア系少数民族が住んでおり、正教会かカトリック教会に属する傾向にある。
アフメト・ダウトオール首相は、「宗教差別はトルコでは一切問題ではない」と主張し、「AKPは、市民を平等に扱い、等しい公民権の原則はトルコの特性であり続ける」と述べた。