「新老人の会」千葉支部による、第4回フォーラム「日野原重明会長103歳記念特別講演」が11月24日、千葉市民会館(同市中央区)で開催された。1000人が入る大ホールが満員になるほどの盛況ぶりで、第一部は「新老人の会」会長の日野原重明氏による講演、第二部にはテノール歌手秋山衛氏と船橋女性合唱団によるミニコンサートが行われた。
新老人の会は、「65歳以上を老人」とする捉え方がすでに実態に即していないとして、75歳以上の自立して生きる老人の姿を「新老人」と名づけた日野原氏の「新老人運動」に賛同する人々の集まり。2000年9月に発足して以来、全国に45の支部が展開され、現在の会員総数は約1万1000人。平均年齢は70歳。
世界に例を見ない高齢化の道を突き進む現代日本において、自立し、生きがいを持って生きることを目指し、「いつまでも愛し愛される人間であること」「創意を持ち続けること」「耐えること」の3つのスローガンの下で活動している。
スローガンだけでなく、▽自立をして良い生活習慣・文化を次の世代に伝える、▽戦争体験を生かして世界平和の実現に寄与する、▽自分たちの健康情報を研究者に提供し次の世代に貢献する、▽会員同士新しい友を求め全国的な交流を図る、▽自然への感謝を持ち良い生き方を普及する、という5項目の目標を掲げ、「子どもたちに平和と愛の大切さを伝える」という使命を持っている。
「いのちを守り、平和を築く-私たちが伝えて行くべきものは何か-」と題して講演を行った日野原氏は、軽い足取りでステージに登場。近頃、心臓に疾患が見つかったものの、90歳を超えるため手術を担当してくれる医者がおらず、普段は車椅子に乗っているというエピソードから話し始めた。普通の老人であれば、「気の毒に」と暗い雰囲気になってしまうようなエピソードだが、日野原氏が話すと、会場から何度も爆笑が起こる。
自分のいのちを大切にするように、他人のいのちを大切にすることで世界平和は実現できる、と信じるという日野原氏。今回の講演会の題には、「まずは、自分のいのちを大切にすることが大切だ」というメッセージが込められているという。
日野原氏は、フランスの画家ゴーギャンの名作「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」が大好きだという。みなさんのいのちはみなさんのものではない、与えられたものだということを意識してほしい。そして、それがどうして与えられたのかを考えてみましょう、と語り掛けた。また、いのちの真価を考えるにあたって、今までいのちの危険を感じた経験がありますかと問い掛けた。
日野原氏自身は、1970年のよど号ハイジャック事件に巻き込まれた際、発生4日後に開放され日本の土を踏んだ。その時、「自分のいのちは与えられたものだ。これからは人のために生きよう」という実感が湧いてきたという。
「どこから来て、何者で、どこへ行くのか」という重い命題に対して、「いのちは与えられたものだ」と確信に満ちた強さで断言する日野原氏。その背景には、一度死を覚悟した経験と、いのちを与えたもう神への信仰がある。
30歳で医学部に入り、38歳から医者として働きを始めたドイツのキリスト教伝道者アルベルト・シュバイツァーを尊敬しているという日野原氏は、何歳になっても「創(はじ)める」ことをし続けなければならないと語り、「人のために生きようと決心するだけではだめです、行動に移さなくてはいけません。行動するためにこの場所を出て行ってください」と人々を送り出した。
日野原氏は、自身の父である日野原善輔牧師を記念した日本基督教団日野原記念上尾栄光教会(埼玉県上尾市)に毎年行っているというが、帰り際には必ず「来年また会いましょう!」と言って去って行くという。成すべき仕事がある限り神は自分を生かしてくださると、地上での働きに邁進し続けている。