中国でNHKの海外向けニュースを見ていた人によると、4月29日夜、テレビの画面が暗転して一時的に映像も音も入らなくなった。浙江省温州市の三江教会が当局によって強制的に取り壊されたことを伝える内容が即時カットされたと見られる。
当局はこれまで政府公認としてきたキリスト教会にも、事実上の弾圧を始めた。しかし、国内の主な報道機関がそれを扱うことはほとんどなく、新聞などで報道されたとしてもごく小さな記事で「違法建築の教会を取り壊した」などと伝えるのみだ(関連記事:中国政府、キリスト教会への迫害を開始? 温州市の三江教会が取り壊される)。
例外的なメディアとしては、中国のキリスト教新聞「福音時報」がある。その報道によると、当局によって教会堂が破壊された三江教会の多くの信徒たちは教会に近づくことも阻まれ、遠い路上から茫然と解体作業を見つめていた。泣き出す人の姿もあった。
三江教会堂の建設には12年の歳月と、およそ5億円が費やされていた。建築費用は信徒からの献金でまかなわれ、少ない貯えを捧げた高齢者たちが少なくなかった。三江教会堂は建築許可などを正式に受けていた「公認教会」だった。
信徒の一人は、「当初は十字架の高さが問題視されただけだったのに、どうしてすべてを取り壊す必要があったのか」と悲嘆する。ある信徒は、信徒ではない自分の家族から「もうこのことにかかわらないでほしい」と強く迫られたという。
主要なメディアは報道しないが、教会の破壊は三江教会だけでなく、浙江省をはじめとする他の地域でも起きていた。4月末までに平陽などで2つの教会が破壊された。300人の警察が派遣され、抵抗した6人の信徒が負傷。舟山では教会の十字架が強制的に撤去された。
信徒の一人は、強制執行のために迫り来る行政関係者や警察官たちに、こう語ったという。「あなたがたには壊すための機材があるが、私たちには聖書がある。あなたがたは武力を持っているが、私たちはイエスを持っている。天の父を知る私たちには圧倒的な優位がある」
中国国内外のソーシャルメディアの投稿欄には、中国人信徒たちから海外の信徒たちにあてた、祈りの要請などが次々と書き込まれている。