中国浙江省温州市で29日、完成目前だった教会堂が、違法建築を理由に強制的に取り壊された。
破壊されたのは同市の三江教会。地方当局が10日に撤去命令を出したことで、およそ3000人の信徒たちが教会の前に集まり、盾となって抵抗を続けていた(関連記事:「十字架が目立ち過ぎ」 強制撤去命令に中国のキリスト教会が抗議行動)。
当局は多くの警察官を動員して取り締まりに乗り出し、教会の代表者を逮捕したという。周辺道路を封鎖して、28日から複数の重機が取り壊し作業を開始。29日までに建物はほとんど解体された。
三江教会堂は信徒の献金で建設が進められ、2000人を収容する中国でも指折りの大きな教会となるはずだった。完成間近で内装工事に入っていた3月に、地元当局が突然、建築認可を超えた建物であるという理由で取り壊しを通知した。
これに反発した信徒たちは、教会を守ろうと集まり、その数はおよそ3000人に膨れ上がった。教会堂に泊まり込み、教会の周囲で礼拝を行ったり賛美歌を歌ったりして抗議していた。
29日夜のNHKニュースでも報じられ、「牢屋に入れられても絶対に最後まで守る」と話す男性信徒の姿と言葉が放送された。
教会の一部を取り壊したり十字架を取り外したりする動きは、浙江省の台州や舟山でも起きている。これに対して浙江省側は、「違法建築の撤去は去年から進めている措置で、対象は国有企業も含まれており、特定の宗教を対象にしたものではない」としている。
しかし、中国政府は「当局の管理を超えてキリスト教が広がることは、共産党の政権基盤を揺るがしかねない」として対応を強めている。2030年には中国が世界最大のクリスチャン国になるという予測も出ていて、当局としてはキリスト教徒の急増を抑えたい意向があると見られる(関連記事:2030年には中国が世界最大のクリスチャン国に)。
これまでにはなかった、有無を言わさぬ一方的な教会堂の取り壊しという姿勢を示したことから、キリスト教と教会への圧力は一層強まるのではと懸念が広がっている。