中国浙江省の三江教会が地元当局から建物の強制撤去を命じられ、多数の信徒たちが教会の前に座り込んで抗議している。米ニューヨーク・タイムズ紙や英テレグラフ紙などが電子版で伝えた。
三江教会は浙江省温州市にある中国政府公認のキリスト教会。温州市とその周辺にキリスト教徒は数千人規模でいると見られ、大きな会堂のある同市を「東のエルサレム」と呼ぶ人もいる。
報道によると、通りかかった同省の政府高官が、教会建物の上に掲げられている十字架を見て「目立ち過ぎ」であるとし、当局は「違法建築」の理由で強制撤去を命じたという。
今月3日、当局は「この教会は安全性に重大な瑕疵がある違法な建築物」と表明し、「15日以内の強制撤去」を発令。多数の信徒たちが教会の前に集まって徹夜で座り込みをして教会を守ろうとしている。
当局と警察は多くの警察官や私服警察官を派遣して、関係者らを「説得」しているという。5日には祈りの集会が持たれ、牧師の一人は「我々は暴力を求めていない。平和的な座り込みをして神の助けを祈っている」と語った。
信徒の一人は「私たちは老後の貯えを、お年寄りは自分の棺のお金も捧げて、この会堂を建てました。ここは私たちの家なのです」と話す。
中国では、政府に認められていない、いわゆる「地下教会」は取り締まりの対象とされるが、三江教会は当局公認の会堂として建てられた。地元信徒たちの献金による建築費は3千万元(約5億円)で、温州政府は昨年9月に公式サイトで三江教会の建築を「模範的プロジェクト」として称えていた。
浙江省のほかに、泰順、文城、瑞安にある教会も、強制撤去の通知を受けたと伝えられている。教会関係者の話によれば、当局は「目立った十字架を掲げている教会をターゲットにしている。教会の強制撤去命令は安全上の問題からではなく、教会の土地を使いほかのプロジェクトを開発して利益を生むためだ」と話している(関連記事:2030年には中国が世界最大のクリスチャン国に)。