韓国基督教総連合会(韓基総=CCK)は、沈没した韓国客船セウォル号の事故を受け、同船の実質的なオーナーである兪炳彦(ユ・ビョンオン、73)を告発する声明を、加盟する59教団の連名で出した。「(韓国内にいる)1200万人のクリスチャンの名により、犯罪の元凶である救援派(クオンパ=キリスト教福音浸礼会)の教主であるユ・ビョンオンを告発しますので、法が許す最も厳しい対応をもって、再びこの地に犯罪集団が足を着くことがないよう処罰してください」と、非常に厳しい言葉で徹底的な追及と厳罰を求めた。
韓国南西部・珍島(チンド)近くで発生したセウォル号の沈没事故は、29日までに死者が200人を超え、行方不明者も依然として90人以上がいる状態が続く。同船を運航していた清海鎮海運は、法定積載量の3倍近い荷物を積載してセウォル号を運航させたり、従業員の安全教育費が年間約5万円しかないなど、利益至上主義の運営が報道で明らかになっている。
一方、清海鎮海運を所有するユ・ビョンオンは、韓国でキリスト教の異端とされる「救援派」の教主。「救援派」は、ユ・ビョンオンの妻の父である権新燦(コン・シンチャン)によって、1962年に始まったが、「悔い改めを繰り返すのは救われていない証拠であり、悔い改める必要はない」などとするキリスト教の異端だ。
CCKも今回の声明で、「韓国基督教総連合会は、救援派が決してキリスト教ではなく、キリスト教と詐称した疑似集団であることを明言します」と断言。「(救援派は)名称に『キリスト教』『イエス』『宣教』を使用しているが、韓国の正統的なキリスト教の教団とは全く関係のない疑似異端集団であり、韓国の正統的なバプテスト派である基督教韓国浸礼会(CCK加盟教団)とも全く関係がなく、1200万人の信徒は、絶対にサタンの惑わしに陥ってはいけない」と警告している。
CCKはまた、ユ・ビョンオンが関わった疑われた五大洋集団自殺事件(1987年)についても声明で触れている。工芸品製造会社「五大洋」の従業員ら32人が自殺したこの事件では、五大洋は、実際は朴順子が主宰する新興宗教で、救援派に対して多額の負債があった。そのため、負債を巡って殺害された疑惑が持ち上がり、ユ・ビョンオンは取り調べを受ける事態にまでなった。その後、ユ・ビョンオンは信徒から金をだまし取ったとして詐欺罪で懲役4年の実刑判決を受け服役している。
CCKは「従業員など32人の手が結ばれ、首にひもが巻かれたまま死体で発見された全国民を驚愕させた事件」だとし、「法的には終わったが、いまだに世紀の謎の事件で、われわれクリスチャンは、それを忘れずにいます」としている。
一方、仁川(インチョン)地検は今回の事件を受け、ユ・ビョンオンの自宅など10カ所を家宅捜索。ユ・ビョンオン一家は国内外に2400億ウォン(約237億円)の資産を保有しているとされており、地検はユ・ビョンオン一家が清海鎮海運に経営圧力をかけ、安全管理を疎かにしたことが、事故の間接的原因になったとみている。
ユ・ビョンオン側は、資産については100億ウォン程度だとし、今回の事件の責任を痛感し、被害者遺族らのために使用するとしている。