米国聖書協会(ABS)が、50年に渡り拠点としてきたニューヨーク・マンハッタンの12階建ビルを売却すると発表した。ビルは売却するものの、ニューヨーク市には留まるという。
米国聖書協会が、ニューヨーク・マンハッタンで拠点としてきた12階建てのビルを売りに出した。同協会代表によれば、協会のさらなる使命を果たすため「この敷地の価値を公開する」ことにしたのだという。最高級の不動産に囲まれたこの敷地の不動産の価値は、少なくとも3億ドル(約309億円)にはなると見込まれている。
「このマンハッタンのビルは50年近くの間私たちの役に立ってくれました。この敷地を売却するという決断をしたのは、この敷地の価値を公開し、米国聖書協会の使命をさらに果たすためです」と、同協会のピーター・ディアロフ代表は、報道発表で語った。「活動も3世紀目に入り、人生を変える聖書のメッセージを聴いてもらうよう人々に呼びかけるため、次の100年間の活動の基礎を築いているところです」
同協会の広報担当主任ジェフ・モリン氏は3月27日、委員会は何年もの間移転を検討していたが、「必要な建物の改修費用とこの地域の市場価値の高騰により、この1年で特にその決断が早まった」と、米クリスチャンポスト紙にメールで伝えた。
同協会は200年もの間、セントラルパークから近いだけでなく、タイム・ワーナー・センターやトランプ・インターナショナルホテル&タワーなど最高級のビルの間に立ち、売却の仲介を務める不動産会社によれば、その立地条件は他に並ぶものがない程だという。
「最高級の開発地域というと、エリアとしてもスケールとしても、高さと土地専有面積という点でも完璧で、コーナーにあり、存在感があり、セントラルパークやハドソン川のようなランドマークのそばにある必要があります。この敷地はこれら全ての点で完璧なんです」とこの売却を担当するCushman & Wakefield社のヘレン・ファンさんは「Crain's New York」紙に語った。
会社の使命を、「クライアントの固定資産を動的資産に変える援助をすること」 と定めているCushman & Wakefield社は、同協会の新しい拠点を見つけることも任されている。
地元の伝道の大黒柱として機能し、イベントや映画上映も行うことに加えて、同協会はその建物の60パーセントを他の企業に貸しているという。モリン氏によれば、同協会の2012年の年間純資産が3億9千8百万ドル(約411億円)以上であり、これらの企業との協力関係は続けていくそうだ。
「ABSは常に他の企業と強い協力関係を結んできましたし、これからもそれは続きます。新しい拠点が定まったら、また具体的にそれらの関係を継続する方法を決定します」とモリン氏。「現在のビルを売却するという決断は、要は財産運用ということです。費用のかかる改修が必要な建物を捨てて、マンハッタンの中心の市場価値を公開し、宣教重視の活動に再投資するためです」とモリン氏は言う。
同協会のビルの空間は18万平方フィート(約1万6千722平方メートル)あると言われているが、改修して30万平方フィート(約2万7千870平方メートル)のコンドミニアムに生まれ変わるのではないかと、「Crain's New York」紙は伝えている。
同協会は、1966年以来、ニューヨーク市のブロードウェイと61丁目の角に立っているが、聖書の翻訳、出版、流通を行っている。1816年にニューヨーク市で設立され、現在の建物は4つ目の拠点である。
移転は5度目となるが、同協会の代表はこの協会は常にニューヨーク市内に残るだろうと話している。「設立以来ニューヨーク市が我々の伝道の拠点だった。米国文化・商業の中心たるニューヨーク市内で、我々は常にプレゼンスを保つことができると信じている」とディアロフ代表は語った。