STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)の再現実験を行っていた香港中文大学の李嘉豪(リ・カホ)教授が、「個人的にはSTAP細胞は存在しないと考える」などとして、再現実験を中止することを明らかにした。共同通信などが伝えた。
李教授の研究チームは、STAP細胞の論文が1月下旬に英科学誌ネイチャーに掲載された直後から再現実験を行っていた。4月1日には、実験での途中経過におけるコメントで、STAP細胞の作製の一部に成功した可能性がなどと伝えていた。一方、これについて一部メディアは「STAP細胞成功か」と報じ、注目を集めていた。
朝日新聞の報道によると、李教授は、多能性幹細胞の場合に光るマーカーが対象となる細胞と比較して約8倍高かったことから、「(細胞を微細なガラス管に通す)手法が、STAP細胞につながるかも」とコメントしていた。しかし、李教授はその後の朝日新聞の取材で、「本当にSTAP細胞ならマーカーの値は数百倍程度に上がるはず。誤解を与える伝え方をして反省している」と言い、STAP細胞の作製に成功したと伝えたわけではないと説明した。
共同通信によると、李教授は「個人的にはSTAP細胞は存在しないと考える」「これ以上実験を続けるのは人手と研究資金の無駄になるだろう」として、再現実験を中止するとしている。
一方、STAP細胞の論文を巡っては、同論文の筆頭執筆者である小保方晴子氏が所属する理化学研究所が1日、調査を行っていた6点の内2点で、論文の作成過程で捏(ねつ)造と改ざんの不正行為があると報告した。しかし、STAP細胞の存在の有無については分からないとして、今後1年かけて検証するとしている。
一方、小保方氏は理研の調査結果に対して、「とても承服できません」と反論するコメントを発表。「このままでは、あたかもSTAP細胞の発見自体がねつ造であると誤解されかねず、到底容認できません」とし、研究過程で「悪意のない間違い」はあったものの、STAP細胞の存在については否定されないという立場を示した(関連記事:STAP細胞論文捏造疑惑:小保方晴子氏、調査報告に反論「驚きと憤りの気持ちでいっぱい」 コメント全文)。
STAP細胞の論文共著者の1人であるチャールズ・バカンティ・米ハーバード大教授も、理研の調査結果を受け、「指摘された間違いが、科学的な中身や結論に影響するとは思わない」(TBS)とコメントしている。