ロシア正教会は20日、ウクライナ情勢に関する声明文を発表し、「暴力を繰り返してはならない」と改めて訴えた。しかし、この声明文に対し、ロシア正教会はプーチン政権の傀儡(かいらい)だという批判の声も出ている。
一方、ウクライナ正教会(キエフ総主教庁)のフィラレト総主教は、19日に発表したロシアによるクリミア併合に関する声明文で、国連や欧州安全保障協力機構、北大西洋条約機構など安全保障に関するすべての国際機関に対し、「ウクライナに対するロシアの侵攻をやめさせるためにあらゆる手段を取らなければならない」と訴えた。ウクライナ宗教情報サービスが伝えた。
クリミア半島をめぐる情勢については、クリミア宗教間協議会が今月1日、クリミアに文民による平和を保つためにあらゆる努力をするとしたアピールを発表していた。
また、米国正教会の聖職者や信徒たちが3日、ロシア正教会のキリル総主教宛に、ロシアとウクライナの対立に関する公開書簡を送り、「クリミア情勢の正常化とロシアとウクライナの平和の回復に影響力を及ぼすよう聖下に求める」と訴えていた。
そして、11日、ウクライナ正教会(キエフ総主教庁)のクリメント・シンフェロポリ及びクリミア大主教は、ウクライナ危機メディアセンターで、クリミアのウクライナ人が危険な状態にあると警告した。
さらに、同教会の主教協議会は同日、声明文を発表し、ウクライナに対するロシアの申し立ては「ひねくれたウソ」だとして、ウクライナにおける分離主義の顕現とロシアの軍事力によるウクライナ侵攻を強く非難した。
クリミア半島の南西部にある都市セヴァストポリでは15日、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会の司牧者で軍のチャプレンでもあるミコラ・クヴィンチ神父が、教会の中で武装した男たちに誘拐されたが、同日中に解放された。しかし翌日には3人のカトリック司祭がクリミア半島で失踪し、うち1人は数時間後に解放されたという。
こうした中で、ローマ教皇フランシスコは17日、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会の指導者であるスヴィアトスラフ・シェフチェク大司教と会談した。同大司教は過去数か月間に行われた大規模な反政府デモに対する教皇の支援と連帯に感謝の意を表した。
18日、ウクライナ政府の文化省宗教民族問題部長であるヴォロディミール・ユシュケヴィチ氏は、クリミアにおける聖職者の迫害を強く非難する声明文を発表し、「テロの実行をやめさせるとともに権利と自由の尊重を確保する」よう求めた。
その一方で、クリミア自治共和国の首都シンフェロポリ出身のドイツ人ルーテル派であるマルクス・へリング牧師は16日、ヴァチカン・ラジオで、地元の福音ルーテル教会はクリミアについて中立を保っていると語った。
また、シンフェロポリのユダヤ教指導者であるマイケル・カプスティン師は、2月にイスラエルのメディアに対し、「自分は民主的なウクライナに住みたい」として、もしクリミアがロシアの一部になったら自分はクリミアを離れると語ったという。
ウクライナ文化省のイェヴヘン・二シュチュク大臣は、「ロシアによってクリミアの諸教会が差し押さえられている」と述べ、クリミア人に対し、諸宗教間の平和と寛容を保つよう呼びかけた。