ロシアと欧米の間で、昨年11月からの反政府デモや大統領の解任、クリミア自治共和国などの帰属をめぐって国際的な緊張が続くウクライナ。日本で遠い母国を思うウクライナ人たちの中には、東京に集う正教会で平和を祈っているクリスチャンたちがいる。
日曜日の3月16日午後12時半、在日ウクライナ正教会の司祭であるポール・コロルク神父は、静寂の中で胸で十字を切り、振り香炉で乳香を焚いて、痛悔・聖体礼儀前の祈りを始めた。
コロルク神父から手渡された1月12日付の米紙ウクライ二アン・ウイークリーには、「東京で創立された聖ユダ・ウクライナ正教ミッション」という見出しでこの教会が紹介されている。
この正教会の聖体礼儀は、原則として2週間に1度、東京タワーの近くにある日本聖公会聖オルバン教会(東京・芝公園)で行われている。同教会の入り口に置かれた椅子の上には、「東方正教会(ウクライナ正教会)聖体礼儀:午後1時より どなたでもようこそ! Ukrainian Orthodox Divine Liturgy – 1:00p.m. All welcome!」と書かれた表示があった。第3週のこの日は主に英語と日本語によるものであったが、基本的には第1週の日曜日に主にウクライナ語と英語による聖体礼儀が交互に行われているほか、水曜日にはカトリック目黒教会で洗礼準備講座を日本語で行っているという。
フェイスブックには、在日ウクライナ人コミュニティのページがある。しかし、東京・西麻布にある在日ウクライナ大使館のウェブサイトには、次のように説明されている。
「日本には正式的なウクライナ人コミュニティーはない。同時に大使館は臨時的に日本に滞在するウクライナ人と連絡を保っている。2009年3月1日に東京で在日ウクライナ大使館の支援の下でウクライナ正教ミッション付属ウクライナ日曜学校が開校された。学校の授業は東京の聖オルバン教会で行われている。2009年11月にウクライナにおける1932―1933年の飢餓の犠牲者のためにウクライナ正教ミッションは東京の聖オルバン教会で礼拝を行った。礼拝には東京に住んでいるウクライナ人、アングリカン教会又はロマンカソリック教会の代表者、在日ウクライナ大使館職員、現地の日本人が参加した。2010年1月17日、ウクライナ統一記念日を祝うためにはウクライナ国家のための礼拝が行われた。礼拝はウクライナ正教ミッションにより東京の聖オルバン教会で行われた」
取材したこの日曜日、在日ウクライナ正教会では午後1時から約1時間20分にわたって聖体礼儀が行われ、この日の聖体礼儀の出席者は11人。そのほとんどが国際結婚による家族だという。コロルク神父自身も日本人女性の妻を持つ。
「私たちはいつも少人数でやってます。今日はカントル(音楽指導者)がインフルエンザなので、音楽的にはレベルが低いです」と同神父は話した。しかし、大きな祭りの時は60人集まることもあるという。
はじめにリタジーによる平和の祈りが続いた。
「平和のうちに主に祈りましょう・・・平和と私たちの魂の救いのために主に祈りましょう。全世界の平和と神の聖なる教会の一致のために主に祈りましょう」
「現代に平和が訪れますよう主に祈りましょう」
「あなたの家の慈しみを愛する人を聖とし、あなたに希望を置くものを見捨てることなく、聖なるみ力で栄光をお与えください。あなたが創られたこの世界、あなたの教会と司祭、・・・日本と、・・・母なるウクライナ、そしてその国の政府と軍隊、その国のすべての人々のために、主に祈りましょう」
「すべての悲しみや苦しみ・怒り・危険・暴力から救われますよう、主に祈りましょう」
「神よ、あなたの恵みをもて、私たちを守り救い憐れみ、私たちをあなたの平和のうちに保ってください」
「幾度も幾度も平和のうちに主に祈りましょう」
「神よ、あなたの恵みをもて、私たちを救い助け憐れんでください」
(続く:「(2)コロルク神父『このような腹立たしい時には祈り』」へ)