創造論者ケン・ハム氏は、近日公開予定のハリウッド映画『ノア 約束の舟』(原題:Noah)が、聖書から逸脱しており、福音をノンクリスチャンの人たちに伝えるということに関して害にはなっても益にはならない、と述べている。
全米宗教放送協会会長のジェリー・ジョンソン博士が米クリスチャニティ・トゥデイ誌に掲載した記事に対して、聖書を文字通り解釈することを推進する米キリスト教弁証学的布教団体「Answers in Genesis(AiG=答えは創世記に)」のブログに、同団体代表であるハム氏は、このようにコメントし、今月28日に封切りされるオスカー俳優ラッセル・クロウ主演のこの映画を、家族で見に行くようジョンソン博士が勧めていたことに対して、難色を示している。
ジョンソン博士は記事の中で、「クリスチャンは、世間一般の文化に対し、無条件に拒否反応を示し過ぎる傾向がある。この映画の中には、最初から最後まで、罪と裁きの概念が全体の中心テーマとしてしっかり入っている」と書いていた。
一方、ハム氏は「ありがたいことに、クリスチャニティ・トゥデイ誌に後ほど掲載された関連記事には、映画の否定的な側面にも言及があった」と感謝もしている。
ジョンソン博士は、2つ目の記事で、聖書の記述に忠実でない映画の側面について警告を発している。ハム氏自身も、AiGのスタッフがこの映画の予告編を見た後、聖書と食い違う5つの側面を次のようにリストアップしている。
1.ノアの家族構成が、「妻と3人の息子、そして息子の妻1人」となっており、聖書の事実と異なっている。
2.2人の、岩から出来たような(堕落した天使のように見える)人物が、ノアと共に箱舟を作ったことになっている。
3.けがをした(ノアの時代に存在しない人物、創世記4章22節)トバル・カインが、たった10分足らずで箱舟の中に斧で侵入し潜伏する。ノアの次男に、ノアを殺すために船底に彼をおびき寄せるよう説得するが、次男は途中で気が変わり、(ノアが)トバル・カインを殺すのを助けることになる。
4.映画の中で、動物の方が人間よりもはるかに重要であるという環境保護主義の思想が過度に強調されている。
5.非常に怒りっぽい男として描かれているノアは、何度も自身の家族に、「お前たちが人類最後の世代だ。二度と子どもを産んではならない」と繰り返し言い聞かせている。息子の嫁が妊娠すると、自身の孫を絶対に殺すと断言している。
ハム氏は、「この映画が伝道のきっかけとして利用できると考えるクリスチャンもいるようだが、『ノア』はあまりにも聖書から逸脱しすぎていて、ノンクリスチャンが見ても、益よりも害の方が多いだろう」と指摘する。
最近、米オンラインニュース「ニュースマックス」に対し、ハム氏は、「もちろん、映画を見た後、自分で本当の物語を聖書で読もうとする人もいるだろう。しかし今の時代、真実なのか作り話なのかが区別できない若者も多く、時間をかけて自分の意見を作り上げることをしない場合が多い」と語っている。
「聖書からテーマを得たハリウッド映画は、伝道につながる会話のきっかけとなるかもしれないが、『ノア』に関しては、それは言えない。問題があまりにも多いので、ノンクリスチャンが見ても、返って逆効果になりかねない。映画は、見てみるまでは批判してはいけないと言う人もいるが、あの冒涜的な映画『最後の誘惑』が公開された時も同じことが言えただろうか。あの映画の内容が悪いという事実は、それが封切りされる前から分かっていた。人の心を神から遠ざけてしまうような、反聖書的な映画を見に行かないよう、注意を呼びかける理由は十分にあっただろう」と結んでいる。