【CJC=東京】聖書に登場する『ノアの方舟(はこぶね)』を探す中国とトルコの探検家チームが香港で4月26日、方舟が漂着したといわれるトルコ東部のアララト山(標高5137メートル)で、方舟の木片を発見した、と発表した。
この発見は、聖書の記述が史実に沿ったものだという主張を補強することになり、天地は比較的近年に、創世記の記述通りに7日間で創造されたと主張する人を勢いづけることにもなる。
しかし、福音派キリスト者でかつてはチームの一員だったランダル・プライス博士は、今回の発見が綿密な検証には耐えられない可能性がある、と語った。
「もしも世界が、これは驚くべき発見だと思いたいなら、それはそれで良い。問題は結局のところ、まっとうな分析の結果、これが偽物となると、キリスト者とはだまされ易いということで、それこそ問題が多過ぎる」と言う。
プライス博士は、バージニア州リンチバーグのリバティ大学ユダヤ研究センター所長。明言はしなかったものの、現地のクルド族が資材を担ぎ上げて中国チームのために偽物を作り上げたと信じられる根拠を確認した、との報道もある。黒海地方の古建造物から採った木片を2009年夏までにアララト山に持ち込んで、洞穴の中に置いたという。
プライス博士だけではない。テキサス州ダラスにある『創造調査研究所』のジョン・D・モリス所長も2005年以来、チームに協力していたが、香港で行われた今回の記者会見への参加を断わった。「私は科学者だ。明確な証拠が欲しいが、今のところはない」と言う。
今回のチームは『国際ノア方舟宣教団』が派遣したもの。このような疑問が出るのを予想してか、チームに参加している香港のドキュメンタリー映像作家、楊永祥氏は、「方舟を見た人はいないのだし、どんな形なのか、誰も知らない。聖書や現地の信仰などを含め歴史的にみて、これがノアの方舟だということを99%確実だ、と言っているだけだ」と語っていた。
進化論・創造説をめぐる議論には確たる証拠を求める動きがつきまとう。「現代科学は聖書物語に挑戦してきた。聖書を字句通りに受け取りたい人たちは、証拠を見つけることに熱心になる」とコネチカット州ニューへブンにあるエール大学の歴史・宗教学担当のカルロス・M・N・アイア教授。
ノアの方舟を発見したからといって、それで何かが決まるというものではない、とモリス氏。キリスト教信仰は信仰によるもので、証拠によるものではない。「私の信仰はノアの方舟にはない。しかし方舟は、私が信じているものに基礎づけられた物質的な確認にはなるだろう」と言う。
これまでにもアララト山に探検に出かけ、ノアの方舟のものだ、という「証拠」を持ち返った例はある。フランスの探検家フェルナンド・ナヴァラは5000年前のものと見られる方舟の一部を発見した、と報告したものの、後になってせいぜい500年から750年前のものだ、と判明した。「二度あることは三度ある」とアイア氏は語る。