5日死去したネルソン・マンデラ元大統領(95)の伝記映画「マンデラ-自由への長い道」が同映画はマンデラが死去したわずか数日前の11月29日から全米で公開開始となっている。6日、米クリスチャンポスト(CP)紙が報じた。
同映画はマンデラと長期間親交があったU2が新曲「Ordinary Love」を同映画のために作曲していた。
同映画を視聴したクリスチャンからは、「この映画は大切なことを教えてくれる内容にはなっているが、クリスチャンの信仰がいかにアパルトヘイト(人種隔離)政策の悪を非難するのに役立っているか、マンデラ氏のキリスト教信仰に動機付けられた行動が十分に分かりやすく表現できていないように感じる」との感想が聞かれている。
ネルソン・マンデラがアパルトヘイト政策と戦い、自由への長い道を27年におよび収監にもかかわらず忍耐強く歩んできたが、その動機はキリスト教の信仰にあるといわれている。
米ペッパーダイン大学コミュニケーション学助教授のクレイグ・デットウェイラー氏は米CPの取材に対し、「この映画は赦しと和解のすばらしい例を示してはいるが、マンデラ氏が『赦す』ことができた根本的な動機について明らかにできていない。この映画はもっと信仰と霊性に満ちた作品にもなり得ただろう」と指摘した。
米バイオラ大学映画・メディア学助教授のジョン・シュミット氏は同映画の感想として「ネルソン・マンデラの精神を支えたものが何か、彼が自由と平等を求め続けた根本となる動機はどこにあったのかがわかりにくい」と指摘した。
同映画ではアパルトヘイト政策と戦ってきた指導者ネルソン・マンデラの生涯を描き出している。
シュミット氏はスティーブン・スピルバーグ監督の「リンカーン」ではリンカーン第16代米大統領の生涯を端的に映し出し、より信仰を伝えていたことと比較し、
「この映画はマンデラの生涯を伝えるだけでなく、もう少し信仰に焦点を当てることができたのではないだろうか」と述べた。
デットウェイラー氏は「この映画は力強い映画で、たとえすさまじい虐待を受けたとしても『赦すこと』が人権運動にあって唯一の前進する道であるという中核となるメッセージは伝えられている」と賞賛したが、両氏ともに「クリスチャンが見るには物足りなさを感じる」ことを認めた。
その上でデットウェイラー氏は映画全般について、しばしば映画によって聖書の言葉が政治政策に誤用されることで、恐ろしい政治運動を正当化することができ、そのために本当の信仰が偽りの信仰によって隠されてしまうことがあることを指摘した。
シュミット氏は映画全般について、「自身の罪があらゆるレベルにおいて明らかにされるような問題に取り扱う映画を好んで観ている」とし、「中にはホロコーストなどを扱う映画はもはや必要ないという人もいる。しかしこのような映画は将来の世代が過去の時代の悪を知ることで、自身の罪とも向き合うために必要である。クリスチャンが自身の罪をより明確にし、神をより信頼することが生まれ持ってもつ原罪に打ち勝つために必要であると認識できる映画が必要である」と述べた。
シュミト氏は同映画のすばらしい点としては「マンデラ自身を讃えるだけでなく、彼の欠陥も描き出しており、力強く時系列的に人種差別やその他の差別における罪を描き出している」と感想を伝えた。