21日から北海道・札幌で開かれている第5回日本伝道会議(テーマ:危機の時代における宣教協力)の最終日24日に採択される「札幌宣言」の案が会議2日目の22日、参加者全員に配られた。今年、日本のプロテスタント宣教150周年を迎えるのと関連して、150年間の宣教を回顧して感謝、悔い改める内容が盛り込まれ、また開催地となった北海道の先住民族であるアイヌ民族へ対する歴史的な反省についても言及された。23日午後5時までに同案に対する意見を受け付け、24日のエンディングセレモニーで採択される予定。以下、「札幌宣言」(案)。
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福音信仰に生きる私たちは今、主への感謝をもって過去4回の日本伝道会議を振り返ります。1974年、日本福音同盟(JEA)は、宣教協力の志をもって京都で第1回日本伝道会議を開催し、聖書信仰を基盤に「日本をキリストへ」と祈りを合わせました。1982年、再び京都に会して福音の分脈化を検討し、「終末と宣教」をテーマに、教会主体の宣教協力の具体化を計画しました。1991年には、地方からの視点を重視して那須塩原に集い、「日本からアジア、そして世界へ」と、公同の教会における私たちの使命を確認しました。そして2000年、JEAの枠を越えて沖縄に集まった第4回日本伝道会議は、沖縄の痛みを心に刻み、21世紀を展望し、「和解の福音」を掲げてグローバル化する時代に歩みを出しました。
ところが2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以降の世界は、和解ではなく敵対の様相を呈し、宣教の使命は十分達成されていません。私たちは、第5回日本伝道会議を開催するこの時を「危機の時代」と捉えました。危機とは、地球温暖化、対テロ戦争、価値観の多様化と新たな愛国心教育、金融危機、教会における少子高齢化と伝道の停滞、等々です。日本海国による最初の宣教師来日から150年。日本の近代化の陰に追いやられたアイヌ民族の地において、新しい日本と教会の明日を拓くべく、「危機の時代の宣教協力―もっと広く、もっと深く―」をテーマに協議した私たちは、この会議の決意を以下のように宣言します。
第1章 日本プロテスタント宣教150年
神の民がその歴史を振り返るとき、そこにあるのは悔い改めと感謝です。主の2009年、日本におけるプロテスタント宣教は、宣教師の長崎・神奈川上陸から数えて150年、ベッテルハイムの琉球伝道から数えれば163年目を迎えます。250年の潜伏の後に教会に復帰したカトリック信徒の信仰の戦い、日本宣教のために惜しみなく仕えた宣教師、イエス・キリストの恵みによって救われたすべての信徒、今日61万6千人となったプロテスタントの信徒と8000を超える教会、先輩たちが為してきた伝道と奉仕のゆえに、主に感謝し賛美をささげます。
その一方、日本の教会は天皇制国体に埋没し、自律的な教会を形成し得なかった結果、偶像化した国家を神と並べる罪を犯し、戦争による災厄をアジアの人々にもたらすこともしてしまいました。その罪は主の前に大きく、教会はさばかれてしかるべきでした。しかし、戦後も存続を許され、新規の伝道をすることができたのは主のあわれみです。それゆえに、私たちは悔い改め、主にのみ礼拝をささげる教会として伝道と奉仕に励みたいと思います。
アイヌ民族を先住民族と認めた歴史的な国会決議(2008年6月6日)後の北海道で開催された日本伝道会議は、この視点からの歴史的反省に私たちを導きます。すなわち大和民族は、アイヌ民族の地や琉球をその版図に加え、天皇の民へと同化しました。その延長線上に台湾や朝鮮の植民地化があったとも言えます。今後は、アイヌ民族が誇りと尊厳をもって歩むことができる共生社会を目指し、近代日本の歴史の反省に立って、アジアと世界の人々と共に歩みます。
【第5回日本伝道会議 札幌宣言(案)目次】
第2章:危機の時代における私たちの使命
第1節 危機の時代 第2節 私たちの希望 第3節 私たちの使命
第3章:宣教協力の実現
第1節 家庭において 第2節 教会において 第3節 地域社会において
第4節 日本において 第5節 世界において