【CJC=東京】米聖公会ロサンゼルス教区は5月15日、公然同性愛者の女性メアリー・ダグラス・グラスプール氏を補佐主教に任命した。
式典には約3000人が出席、「喜びと歓迎の雰囲気に包まれていた」と教区広報担当者。式を阻止しようと、成人男性と少年が、参加者に悔い改めを促し、同性愛は罪だと呼び掛けるなどの事件もあったが、それ以外は予定通りに進んだ。
公然同性愛主教は2003年のニューハンプシャー教区主教に就任したジーン・ロビンソン氏以来のこと。女性同性愛者としては今回が初めて。
性問題では寛容な西海岸にあることが影響してか、ロサンゼルス教区は今回補佐主教にさらに女性ダイアン・ジャーディン・ブルース氏を任命している。
世界のキリスト教では、カトリック教会、正教会に次いで信徒数は第3位の英国国教会(聖公会)。2003年に最初の同性愛主教が誕生した時から、保守派、特にアフリカの聖公会に不満が高まっていた。
今回の任命は、各国聖公会が加盟している『アングリカン・コミュニオン』(世界聖公会共同体)の自粛要請を振り切って行われた。それだけに全世界の7700万人の信徒に与える影響は大きく、『アングリカン・コミュニオン』内の対立を深刻化することは必至だ。
保守的なアフリカの教会は抗議姿勢を強め、同性愛聖職に対して伝統的な姿勢を守る動きを強めるものと見られる。
米聖公会とカナダ・アングリカン教会でも、改革派の動きに抗議して、保守派の一部が離脱、『北米アングリカン教会』結成に動き出している。
また女性主教に反対する英国国教会の伝統派は、今回の同性愛主教登場を、離脱してカトリック教会に加入する意向を固める根拠の一つに加えることも確かだ。
米国では、今回のグラスプール主教任命で、米聖公会が抱えている、同性愛者の結婚、養子縁組、軍隊内での同性愛者の地位などの問題に新たな論議を呼ぶことになろう。
世論調査は一貫して、ゲイやレズビアンが米国社会に受け入れられるようになっていることを示している。一方で、急成長している福音派プロテスタントやモルモン教会は同性愛関係を罪とし、聖書で否定されている、と見なしている。