ナイジェリア北部の4州で、イスラム教の断食月「ラマダン」の期間中(今年は2月28日~3月30日)に、全ての学校を閉鎖するよう命じる知事命令が出された。キリスト教系の学校も対象とされ、現地のキリスト教指導者や教員、学生らの間では批判する声が出ている。
国際キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」(英語)によると、知事がラマダン期間中の学校閉鎖を命じたのは、いずれもナイジェリア北部に位置するカノ、カツィナ、バウチ、ケビの4州。同国北部はイスラム教徒が主流派で、命令が出た4州を含む12州ではイスラム法「シャリア」が運用されている。それでも、このような命令が出るのは、これが初めてだという。
オープンドアーズによると、カツィナ州の宗教警察トップは、命令は私立学校にも適用されるとし、「不遵守は許されない」と述べた。
オープンドアーズで、アフリカのサハラ砂漠以南の広報を担当する法律専門家は、命令を批判し、次のように述べた。
「教育を受ける権利は、学生の宗教的背景に関係なく保障されなければならない基本的権利です。この決定は、宗教的少数者の教育を受ける基本的権利と信教の自由を侵害するものです。今回の事例は、宗教的少数者の基本的権利の侵害にもつながりかねない危険な前例です」
ナイジェリア全国学生協会の広報担当者であるサムソン・アデエミ氏は、当局が「危険な前例」を作り、学生の教育を受ける権利よりも宗教行事を優先していると批判した。
ナイジェリア・カトリック司教協議会も批判的で、命令は、国教・州教を禁止するナイジェリア憲法に違反する可能性があると指摘している。
ナイジェリア・キリスト教協会(CAN)のダニエル・オコー会長は、命令は、既に教育を受けることに苦労している貧しい子どもたちに、壊滅的な打撃を与えかねないと懸念を表明。イスラム教が国教のサウジアラビアでさえ、ラマダン期間中に時間割が変更されることはあっても、学校自体が閉鎖されることはないと指摘した。
ナイジェリア北部ではイスラム過激派による襲撃や殺人、拉致がまん延しており、少数派のキリスト教徒にとって、よりリスクが高い地域となっている。同国で活動するイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」は、「西洋の教育は罪」を意味し、キリスト教徒を標的にした襲撃事件を多数起こしている。
オープンドアーズによると、ナイジェリア北部の政治指導者らはこれまでにも、自身への支持を高めるために、宗教的な決定をしてきた。今回の命令に関しては、現地のイスラム団体が、命令に反発するキリスト教指導者を批判し、多数派であるイスラム教徒の要望を尊重すべきだと主張している。