中絶推進派の集会などで聖書を読むなどしたことで2度にわたり逮捕されたキリスト教の牧師が、逮捕は不当だとして米ワシントン州シアトル市を相手取り起こした訴訟で、同州の連邦地裁は9日、牧師側の訴えを全面的に受け入れた同意命令を言い渡した。
この重要な法廷闘争で勝利したのは、マシュー・マイネッケ氏。信教の自由に関する訴訟を専門とするキリスト教法曹団体「ファースト・リバティー協会」(テキサス州)の支援を受けた。
同意命令は当事者があらかじめ合意した内容で出される法的命令。マイネッケ氏の請求は全てが認められ、同協会は発表(英語)で「完全な勝利」だと強調。これにより、マイネッケ氏は不当逮捕から完全に解放され、再び逮捕されることを恐れることなく福音を自由に伝えられる。また、不当逮捕に対する金銭的賠償と弁護士費用も受け取ることができた。
マイネッケ氏は2022年6月24日、シアトルで開催された中絶推進派の集会で、聖書を読み、プラカードを掲げ、パンフレットを配布しようとしたところ、その場にいた群衆の攻撃的な言動に直面。持っていた聖書を奪われ、ページを破られるなどした。また、マイネッケ氏自身も押し倒され、片方の靴を奪われたという。しかし、駆け付けた警官らは、マイネッケ氏を保護するのではなく、その場から立ち去るよう指示。マイネッケ氏が拒否したところ逮捕した。
この日は、米連邦最高裁が中絶を憲法上の権利とした「ロー対ウェイド」裁判の判決(1973年)を覆す内容の判決を言い渡した日で、集会は最高裁の判決に抗議して開かれたものだった。
当時の状況を捉えた映像には、複数の人が笑いながら聖書を蹴り飛ばす様子や、マイネッケ氏から聖書を奪い取る様子、トイレに投げ込まれた聖書などが映っている。
Desecration of another persons Religious material is a HATE CRIME.
If this was a Quran people would be outraged. People must really hate the WORD of GOD right now. pic.twitter.com/IjXqab1qma— BB (@mattteamjesus) June 26, 2022
マイネッケ氏はその2日後、シアトルで毎年開催されているLGBTQ(性的少数者)の祭典「プライドフェスト」が行われていた総合公園「シアトルセンター」を訪れ、聖書を読むなどしていたが、そこでも同様の状況に遭遇。警官らからは同じく立ち去るよう指示されたが、拒否したため再び逮捕された。 当時の映像には、座って聖書を読むマイネッケ氏を、プライドフェストの参加者と見られる複数の人が取り囲み、大きな声を出したり、嘲笑したりする様子が映っている。また、逮捕時には無抵抗のマイネッケ氏を複数の警官が取り囲み、逮捕すると、周囲から歓声が湧く様子が映っている。
A federal judge ruled Seattle police violated a Christian pastor's free speech rights after arresting him for 'his own safety' Matthew Meinecke was arrested several times while preaching the Bible at left-wing protest — where he was a frequent target of… pic.twitter.com/NIKofQRzEv — Katie Daviscourt (@KatieDaviscourt) September 18, 2024
第9巡回区連邦控訴裁は4月、警官らの行為は違憲である「演説妨害者の拒否」(ヤジの排除)に当たると指摘。周囲の人々の反応に基づくこのような言論制限は基本的権利を侵害するものだとして、マイネッケ氏に有利な判断を示し、連邦地裁に差し戻していた。