カナダ議会で審議されている法案が、結婚やセクシュアリティーなどに関するキリスト教的見解を擁護するために聖書の言葉を引用することを犯罪化する可能性があるとして、懸念する声が出ている。
カナダの下院で現在審議中のC-367法案(英語)は、ヘイトスピーチに関わる同国の刑法319条(英語)の「宗教的免責」を廃止するもの。同条は、「善意で、宗教的主題に関する意見、または宗教的文章への信仰に基づく意見を表明した、または議論によって立証しようとした」場合、免責することを定めている。
宗教的免責が廃止されれば、ジェンダーイデオロギーや子どもの性教育、その他同様のテーマについて、反論したり非難したりする宗教的表現は、ヘイトスピーチとみなされ、刑事訴追される可能性がある。法案の批判者らは、キリスト教徒やその他の宗教団体によるLGBT運動に関するあらゆる発言や批判が、ヘイトスピーチに問われる可能性があるとし、懸念を表明している。
法案は昨年11月、ケベック連合のイブ・フランソワ・ブランシェット党首が提出した。法案は現在、下院の審議における最初のステップである第1読会で審議されているが、今後可決に向けてさらに前進するかどうかは不明。
ブランシェット氏や他の議員らは、法案はカナダにおける最近の反ユダヤ主義デモに対応するものだとしている。
しかし、カナダのプロライフ(反中絶)団体「キャンペーンライフ連合」(CLC)などは、法案はキリスト教徒に対する刑事訴追の増加につながる可能性があると警告している。CLCのキャンペーン・マネージャーであるデービッド・クック氏は2月、CLCのブログ(英語)で次のように警告している。
「(この法案が可決されれば)もはや、人間の性と結婚に関する神のデザインを公の場で分かち合うことは許されなくなるでしょう。子どもにドラァグショー(主に男性が女装して行うショー)を見せることや子どもがドラッグショーをすること、子どもの性転換に対して、神の名において発言することはもはや許されなくなります。これらは全て、LGBTコミュニティーに対する『ヘイトスピーチ』と誤解されかねません。私たちの妊娠中絶反対のメッセージでさえも、女性に対する『ヘイト犯罪』として扱われる可能性があります」
米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)のジェフ・キング会長は、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)の取材に対し次のように述べた。
「(この法案が可決されれば)カナダで信仰を持つ人々を攻撃する壊滅的な法的手段となり、裁判所や警察を通して働く政治家たちが、聖書やコーラン、その他の宗教的文章を引用したというだけで、敬虔な信者を刑務所に送ることができるようになります」
「海外の独裁者や専制君主がキリスト教を黙らせ、絞め殺すために用いたのと同じ方法が、今や西洋の政治家によって用いられているのです。今回の法案は、その最新の例にすぎません」
その上でキング氏は、キリスト教徒と「あらゆる信仰を持つ」カナダ市民に対し、同国の政府関係者に働きかけるよう促している。
「民主主義の果実を享受しているカナダ人は目を覚ます必要があります。このような法案を推し進め、ヘイトスピーチ法を推進することで『保護と団結』を売り渡している西洋の政治家は、自由と民主主義の敵であり、自分たちの特殊な利益を促進するため、あるいは政敵に損害を与えるために、全ての市民を保護する宗教法と言論法を弱体化させることを望んでいるのです」