米国の下院議員8人が、英国のキリスト教徒に対する処遇について懸念を表明する書簡(英語)を送付した。議員らは、英国の状況について「思想の自由」の「存亡の危機」に直面していると危惧している。
書簡はチップ・ロイ議員(共和党)が主導し、ラシャド・フセイン米国際信教の自由担当特命大使に送られた。議員らはフセイン特命大使に対し、英国の問題について発言するよう求めている。
議員らは書簡で、英国は、中絶クリニック周辺の緩衝地帯が全国的に広がるなど、「不穏な道を歩んでいる」と主張。緩衝地帯は、複数の自治体が制定した「公共空間保護命令」(PSPO)によって、中絶クリニック周辺に設けられているもので、この地帯では平和的なものであってもプロライフ(反中絶)活動が禁止される。
禁止される活動の中には、中絶の代替案に関わる支援や情報提供、さらに祈りも含まれる。また、中絶を否定するような行為も禁止されている。
昨年12月には、プロライフ活動家のイザベル・ボーンスプルースさんと、カトリック司祭のショーン・ゴフ神父が、緩衝地帯で黙祷したことなどを理由に逮捕された。容疑は、中絶クリニックの利用者を威嚇したというものだったが、クリニックは当時休診中だった。2人は今年2月、無罪を言い渡された(関連記事:中絶クリニックの近くで祈っただけで2度目の逮捕 無罪判決から3週間後に)。
議員らは、2人の逮捕は個人の自由に対する「重大」かつ「攻撃的」な暴挙だと非難。「英国は今、言論の自由、宗教の自由、さらには思想の自由に対する存亡の危機を招く可能性のある、不穏な道を歩んでいる」と警鐘を鳴らした。
また、緩衝地帯を全国的に設置する法案が検討されていることにも懸念を表明した。
「さらに不穏なことに、英国の議会はイングランドとウェールズ全域の中絶施設周辺に、反宗教的な自由の検閲ゾーンを設置する法案を検討しています。議会は最近、黙祷および合意の上での会話が、犯罪として解釈されないことを明確にする修正法案を却下しました。黙祷を理由に個人を逮捕することは、人の基本的自由に対する重大かつ攻撃的で、不必要にエスカレートした暴挙です」