スコットランド国教会は5月末に開催した総会で、16世紀から18世紀にかけて数千人が処刑されたとされるスコットランドの魔術禁止法をめぐり、教会が担った役割を認め、謝罪した。いわゆる「魔女狩り」に対する謝罪で、同法による犠牲者の大半は女性だった。
英デイリー・レコード紙(英語)によると、スコットランド国教会は総会で、同教会の神学フォーラムによる「歴史的過ちに対する謝罪」(英語)に基づく動議を全会一致で承認。同フォーラムは、謝罪の中で次のように述べている。
「この1年間、当神学フォーラムは、謝罪とは何か、いつ、どのように謝罪すべきかについて考察してきました。これらの考察は、2021年に『告発されたスコットランドの魔女たちを覚える会』という団体がスコットランド国教会に対して行った要請に端を発するものであり、その中で同団体は、スコットランドで魔術を行ったとされる人々の訴追と迫害への関与について、教会に謝罪を求めていました」
「これは、(魔女だと)告発された人々の多くが、当時はまだ十分に理解されていなかった精神疾患を患っていた、と私たちが考えているためかもしれません。または、彼らの中には、まだ広く知られていなかった植物の薬効を偶然発見して使用し、時代の最先端を走っていた者もいたからだ、と私たちが考えているからかもしれません。あるいは、拷問や拷問の脅威、刑の執行猶予により得られた証言は信頼できない、と私たちが考えているからかもしれません。魔女裁判で示された権力の力学があまりにも明らかに性差別的であったからかもしれません。もしくは、妖精との交遊が死刑になるなど、私たちは考えないからかもしれません」
米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)は、歴史家らの話として、スコットランドでは約4千人が魔術を使ったとして告発され、逮捕されたり、拷問を受けたりし、このうちの3分の2が処刑されたと伝えている。
デイリー・レコード紙によると、スコットランド国教会の神学校「ニューカレッジ」校長のスーザン・ハードマン・ムーア牧師は、「歴史的な過ちに対する謝罪とは、過去に起こったことに対して個人的に責任を負うことでも、今日の基準を過去の行為者に誤適用することでもありません」と言い、次のように述べた。
「そうではなく、むしろ、歴史的な過ちに対する謝罪とは、苦しんだ罪のない人々と連帯することです。過去に教会が行った行為の結果として彼らにもたらされた損害を認め、それを悔いることです。私たちの先達が見落とした人々の尊厳を肯定することによって、記録を正し、もはや受け入れられない過去の規範や政策によって生じた苦しみを認めるのです」
「重要なことは、歴史的な過ちを謝罪することは、教会が過去に行ったことによって現在教会から疎外されている人々と和解するための第一歩となり得るということです」
英プレミア・クリスチャン・ニュース(英語)によると、最後の魔女裁判が行われたとされるドーノック大聖堂を担任していたスーザン・マージョリー・ブラウン牧師は、謝罪とは「私たちの人々への接し方が、絶えず慎重に行われる必要があるとの認識を受け入れること」だと述べた。
「それ故、私たちはこの世界を共有する人々を尊重し、尊厳をもって扱います。私たちは過去にそうしなかったのです。そしてそのことを認識することで、現在と未来において、同じ轍(わだち)を踏まないよう最善を尽くすことを約束するのです」
「この謝罪でポイントとなるのは、それは(過去を)再考することではないということと、物理的に謝罪できる相手がいるわけではないということです。私たちが謝罪できるのは、他の人々がどのように扱われたかということです。『私たち』はキリスト者でありながら、人々に敬意と尊厳を持って接することができませんでした。キリストが私たちに求めているように、私たちは彼らを愛せませんでした。キリスト者として、イエスが求めていること、つまり隣人を愛することを確実に行うために、このことは明確にされる必要があります」
3月の国際女性デーには、スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相が、同政府を代表して、魔女とされた人々への迫害行為を謝罪した。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、スタージョン氏は、「これは途方もない規模の不正義だった」とし、次のように述べた。
「女性が法廷で証人として話すことさえ許されなかった時代に、貧しいから、人と違うから、弱いから、あるいは多くの場合、女性だからというだけの理由で告発され、殺されたのです」
「私は首相としてスコットランド自治政府を代表し、このとてつもない歴史的な不正義を認め、1563年の魔術禁止法の下で告発され、有罪となり、中傷され、処刑されたすべての人々に、彼らの死後にあって、正式に謝罪することを選択します」