10年前から中絶反対をアピールする行進「マーチフォーライフ」を実施してきた有志らが15日、お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)に集まり、NPO法人「いのちのマーチ」の設立総会を開いた。
1948年7月13日に現在の母体保護法の前身である優生保護法が成立したことを覚え、「小さないのちを守る会」代表の故辻岡健象牧師ら有志が中心となって、2014年7月13日に第1回の行進を実施。その後もプロテスタントとカトリックの関係者らが共同で、毎年欠かさずこの時期に行進を続けてきた。この日も、教派を超えたキリスト者を中心に約20人が集まった。
第1回から実行委員会の代表を務め、「いのちのマーチ」の設立代表者にもなるカトリック信徒の池田正昭さんは、「10年間歩いてきて、ここで一度立ち止まり、お互いに話し合える機会を作りたかった」と開催の趣旨を説明。「小さないのちを守るためにキリスト者が一致に向かう日本のマーチ」という活動の趣旨を改めて紹介し、「プロテスタントもカトリックも、小さないのちを守るためのお互いの活動に、聖霊の働きを認め合うことが本当の一致だと思う。表面的にではなく、大本のところからつながっていることを認め合える関係になりたい」と話した。
一致についてはカトリック教会の中でも難しさがあることを打ち明けつつ、「小さないのちを守りたいという思いがあれば、必ず一致できるはず。この場が、ゆるくでもつながれるプラットフォームになれば」と期待を込めた。
日本では、中絶は仕方のない場合もあるが望ましいことではないという意識を多くの人が共有しているとし、中絶を積極的に肯定するプロアボーションが幅を効かせる欧米とは「まるで文脈が違う」と指摘。中絶は権利だとする欧米の考え方がなじみにくい日本から、「小さないのち」を守る意識を日本語の「いのち(INOCHI)」と共に発信していきたいと語った。
一方で、「日本では中絶よりも、棄てられる凍結胚の問題が社会課題になる」と池田さん。受精の瞬間に受精卵が光を発する様子をプロジェクターに映しながら、「創造の御業だと思う。受精卵が神の似姿だと気付いたわれわれは、黙っていられないのではないか」と話し、今後NPOの活動として、不妊治療で生じる余剰胚の問題についても政策提言していく考えを示した。
また、毎年この時期に実施していた行進については、小さい子どもや高齢者の参加も多いことから、今年は夏場を避け、アドベント(待降節)の前日に当たる11月30日に「産まれてこなかった全ての小さないのち」を覚えて開催することを決定した。