中絶に反対し、命の大切さを訴える行進「マーチフォーライフ」が15日、東京都千代田区の日比谷公園を出発点に行われた。小さな子どもから高齢者まで約80人が参加し、同中央区の弾正橋まで約3キロの道のりを、「命のための行進」「いのちは神さまの贈り物」と書かれた横断幕や、「中絶やめよう」と書かれたうちわなどを掲げて練り歩いた。
マーチフォーライフは、米連邦最高裁が1973年、中絶を憲法上の権利とした「ロー対ウェイド」判決を出したことを受け、翌74年から米首都ワシントンで始まり、世界的な運動に発展した。米国ではこうした運動が結実し、2022年に「ロー対ウェイド」判決が約半世紀ぶりに覆された。
日本のマーチフォーライフは14年に始まり、「産みの日」にかけて「海の日」(7月第3月曜日)に毎年開催されている。今年は、これまでの主催団体が行進を見合わせたことなどから、フランス人カトリック信徒のポール・ド・ラクビビエさんらが中心となり、フランスのマーチフォーライフ連盟の後援を受けて行った。
厚生労働省の発表によると、20年に日本で行われた中絶は14万5340件。一方、20年の出生数は84万人余り。中絶によって、胎児の7人に1人の命が失われている計算になる。
行進ではこうした統計に触れつつ、「堕胎によって、子どもたちの永遠の可能性を奪ってしまいます。堕胎というのは、子どもに対する、私たち人類に対する罪です」「私たちは、この日本で命の文化を育て上げなければなりません」などと訴えた。
行進には、海外出身者も多く参加した。今年初めて参加したというルーマニア正教会日本支部のダニエル・コリウ司祭は、中絶に対しては正教会全体が反対していると説明。「動物でさえ自分の子どもを殺すようなことはしません。動物から学んでほしい」と語った。
ラクビビエさんは行進終了後、「今年初めて参加してくれた人も数十人おり、準備不足の点もあったが、これだけ人が集まってくれて良かった。来年はより組織化し、さまざまなプロライフ団体を巻き込みたい」と話した。
また、政府などに働きかける場としてだけでなく、プロライフ関係者の交流の場としても、マーチフォーライフを発展させていきたいとコメント。民間レベルでもできることは多くあると話し、望まない妊娠をしてしまった女性たちに対し、中絶以外の選択肢を選べるようなサポートや、医療関係者に中絶の問題点を知ってもらう運動なども進めていきたいと話した。