米連邦最高裁は24日、1973年に下された「ロー対ウェイド」裁判の判決を覆し、中絶する権利は憲法が定めるものではないと結論付けた。
最高裁はこの日、「ドブス対ジャクソン・ウィメンズ・ヘルス」裁判の判決で、妊娠15週以降の中絶を禁止するミシシッピ州の州法「妊娠年齢法」を6対3で支持する判決を下した。
判決である多数意見には、「判決:憲法は中絶する権利を与えていない。『ロー対ウェイド』判決と『プランド・ペアレントフッド対ケイシー』判決(1992年に下された『ロー対ウェイド』判決を支持する判決)は破棄され、中絶を規制する権限は、国民とその選出された代表者に戻される」と書かれている。
多数意見の執筆者はサミュエル・アリート判事(72)で、クラレンス・トーマス(74)、エイミー・コニー・バレット(50)、ブレット・カバノー(57)、ニール・ゴーサッチ(54)の各判事が名を連ねた。このうち、バレット、カバノー、ゴーサッチの各判事は、ドナルド・トランプ政権下の2017~21年に選ばれた判事。トーマス、カバノーの両判事、またジョン・ロバーツ主席判事(67)は同意意見を執筆し、多数意見の結論に同意するとともに、各自の意見も提示している。
多数意見は、「われわれは、『ロー対ウェイド』判決と『プランド・ペアレントフッド対ケイシー』判決を覆す必要があるとする。憲法は中絶について何ら言及しておらず、そのような権利はいかなる憲法上の規定によっても暗黙のうちに保護されていない」と指摘。「『ロー対ウェイド』判決は最初からひどく間違っていた。その論法は非常に弱く、その判決は有害な結果をもたらした。そして両判決は、中絶問題の国家的な解決をもたらすどころか、議論を激化させ、分裂を深めてしまった」とつづっている。その上で「憲法に耳を傾け、中絶問題を国民に選ばれた代表者に戻すべき時」だとしている。
「ロー対ウェイド」判決は、中絶は国が認める権利だとし、胎児の生存期間前の中絶を各州が法的に制限することを規制している。その後の「プランド・ペアレントフッド対ケイシー」判決も、「ロー対ウェイド」判決が確立した中絶権を支持した。
両判決について多数意見は、「憲法が正しく理解されているか、憲法が中絶する権利を与えているかどうかが重要な問題である。『プランド・ペアレントフッド対ケイシー』判決で支配的であった意見は、この問題を飛ばし、先例拘束性に基づいてのみ『ロー対ウェイド』判決を再確認した」としている。
一方、スティーブン・ブライヤー(83)、ソニア・ソトマイヨール(68)、エレナ・ケイガン(62)の各判事は、両判決は、中絶を認めることと、中絶を規制する法律を認めることの「バランスを取っている」と主張し、反対意見で次のように述べている。
「今日、連邦最高裁はそのバランスを崩した。受精の瞬間から、女性には何の権利もないと言っているのである。国は、非常に多大な個人的、家庭的な犠牲があるとしても、妊娠した女性を出産まで強制できると言っているのである」
「今回問題となったミシシッピ州の法律は、妊娠15週目以降の中絶を禁止している。しかし、今回の多数派の判決によれば、他州の法律は、10週以降、5週以降、3週以降、1週以降、あるいは受精の瞬間からでも、中絶を禁止することが可能である。今日の判決を見越して、各州はすでにそのような法律を制定している。さらに多くの州がそれに続くことになるだろう」
「ロー対ウェイド」判決が覆ったことで、今後21州が中絶を完全に禁止するか、現在よりも厳しく制限するとみられている。一方、16州は中絶の権利が州法で成文化されているため、妊娠中のほとんど、あるいはすべての期間を通じて中絶を認め続けることになる。10州は既存の中絶法または中絶の制限を継続し、残り3州は近い将来、有権者による投票で今後の中絶政策を決めるとみられている。