バチカン(ローマ教皇庁)は4日、2011年から16年まで駐米教皇庁大使を務めたカルロ・マリア・ビガノ大司教(83)を、「教会分裂(シスマ)の罪」のため破門したと発表した。ビガノ大司教は、教皇フランシスコと第2バチカン公会議の正当性について、何年にもわたり公然と疑義を示していた。
ビガノ大司教は2週間前の6月20日、教会分裂の罪で告発され、バチカンに召喚されたことを明らかにしていた。また、同28日が出廷または反論の期限とされていたが、応じない考えを示していた(関連記事:教皇フランシスコを「サタンの僕」と呼んだ大司教、破門の可能性 「教会分裂の罪」で)。
バチカンの発表(英語)によると、破門の決定は5日、ビガノ大司教本人に伝えられた。米CNN(日本語版)は、バチカンによる高位聖職者の破門は「極めて異例」と伝えた。
ビガノ大司教は18年、01年から06年までワシントン大司教を務めたセオドア・マカリック元枢機卿(94)の性的虐待疑惑を隠蔽(いんぺい)したとして、バチカンの元現高官ら数十人を批判する11ページにわたる書簡を発表。教皇フランシスコにも批判の矛先を向け、疑惑を知っていながら必要な対応をしなかったとして退任を求めるなどしていた。
これに対しバチカンは20年、マカリック元枢機卿の疑惑に関する報告書を発表(関連記事:バチカン、マカリック元枢機卿の性虐待報告書発表 歴代教皇の対応も詳述)。その中で、ビガノ大司教の主張を否定していた。
この他、神学的に保守的な立場のビガノ大司教は昨年12月、同性カップルへの「自発的な祝福」を認める宣言が出された際、宣言を承認した教皇フランシスコをサタンに仕える僕などと述べ、痛烈に批判していた。
ビガノ大司教は5日、自身のX(旧ツイッター、英語)に、バチカンから送られてきた有罪を言い渡す文書を投稿。「私の信念の故に私を有罪とした事柄は今、記録されました。それは、私が完全に公言しているカトリック信仰を確認するものです」と述べ、「言っておくが、もしこの人たちが黙れば、石が叫びだす」(ルカ19:40)を引用するなどした。
バチカン・ニュース(日本語版)によると、破門された者は「感謝の祭儀やその他の秘跡の執行、秘跡の受領、準秘跡を授けること、他の典礼祭儀の挙行、これらの祭儀への積極的参加、教会の職務、任務等の執行、統治行為」などが禁止される。一方、破門は「悔い改めへと招く、薬としての処罰」だとし、「その人が再び交わりへと戻ることを常に待つもの」と伝えている。