コプト正教会が、同性カップルの祝福を認めることを決めたカトリック教会との神学的対話を停止した。
コプト正教会は3月7日、エジプト北部ワディエルナトルンの聖ピショイ修道院で年に一度の聖シノドスを開催した。聖シノドスでは、各種修道院の承認や、結婚カウンセリングへのメンタルヘルスに関する項目の追加、教会内の一致のための祈りなど、さまざまな議題を討議した。一方、同教会の広報担当者であるムサ・イブラヒム神父は、今年の聖シノドスの「最も注目すべき」決議は、「同性愛の問題に対するカトリック教会の立場の変化を受け、カトリック教会との神学的対話を停止したこと」だと説明した。
コプト正教会は声明(英語)で次のように詳述している。
「(われわれは)あらゆる形態の同性愛関係を拒否するという確固とした立場を確認しました。なぜなら、それらは聖書と、神が人間を男と女として創造された律法に反するからです。コプト正教会は、そのような関係の祝福は、それがどういう形であれ、罪に対する祝福と見なし、これを容認することはできません」
「東方正教会の姉妹教会と協議した結果、われわれはカトリック教会との神学的対話を停止し、20年前に始まった対話がもたらした成果を見直し、また今後、対話を進めていくための新たな基準と仕組み作りをすることを決定しました」
「同性愛の傾向に苦しみ、性的行動から自らをコントロールする者は誰でも、そのコントロールが苦闘として信用されます。苦闘している人たちには、異性愛者と同じように、思考、視覚、魅力の戦場が残されているのです。しかし、同性愛の行為に陥る人については、不貞や姦淫(かんいん)の罪に陥る異性愛者と同じように、真の悔い改めが必要です」
教皇フランシスコは昨年12月、同性カップルの祝福を認める宣言「フィドゥチァ・スプリカンス」を承認した(関連記事:教皇、同性カップルの祝福を許可 ただし結婚に類似するものはNG 結婚の教理も堅持)。
宣言を起草した教皇庁教理省によると、この宣言は「典礼的観点と密接に結び付いている祝福の古典的な理解の幅を広げ、豊かにすることを可能にする」ものだという。また、宣言は教皇の司牧的ビジョンに基づくものであり、「これまで教導権や教会の公式文書の中において、祝福について語られてきたことからの真の発展を意味する」とし、次のように述べている。
「まさにこの文脈の中でこそ、通常とは異なる状況にあるカップルや同性カップルを、その地位を公式に認めたり、結婚に関する教会の永遠の教えをいかなる形においても変えたりすることなく、祝福する可能性を理解し得るのです」
宣言は、結婚などにおける典礼的祝福と、神の憐(あわ)れみを求める人々に与える司牧的祝福を区別。後者について、「人々が祝福を求めるとき、徹底的な道徳的分析が祝福を与える前提条件とされるべきではありません。祝福を求める人々は、事前の道徳的完全性を要求されるべきではありません」とし、司牧的祝福に限り同性カップルに対しても認める内容になっている。
教理省は宣言について、同性愛は罪深いものであり、同性婚は容認されるべきものではないというカトリック教会の教理を堅持するものだとしている。しかし、宣言に対する批判者は、結婚とセクシュアリティーに関するカトリックの教えと矛盾していると主張している。
今年2月には、宣言撤回を求める公開書簡が発表され、100人近いカトリックの聖職者や学者が署名した。書簡は次のように主張している。
「(宣言は)教理や典礼と司牧実践との間に分断を持ち込もうとしています。しかし、これは不可能です。事実、司牧は全ての行為と同様に、常に理論を前提としています。従って、司牧が教理と一致しないことを行うのであれば、実際に提案されているのは別の教理なのです」
「事実は、性的な意味におけるカップルで、そしてまさに客観的に罪深い関係によって定義されたカップルである2人に対して、司祭が祝福を与えるようになるということです。従って、この宣言の意図や解釈、あるいは司祭が行おうとする説明にかかわらず、この行為は伝統的な教理に反する、異なる教理の目に見える具体的なしるしとなるのです」
一方、米団体「カトリック・フォー・チョイス」のジェイミー・L・マンソン会長は、宣言は「驚くべき、歴史的なもの」だとし、歓迎する声明(英語)を発表。「(宣言は)LGBTQIA+(性的少数者)の可視性と包摂性を前進させるための変革をもたらすでしょう」として、次のように主張した。
「教会が、LGBTQIA+のカトリック信者や私たちの結婚、そして私たちの家族の、神から与えられた固有の尊厳と平等を完全に肯定するまでには、まだ長い道のりが必要でしょう」
「宣言は、これが教皇フランシスコの問題ではなく、(カトリック教会の)中間管理階層の問題であることを明らかにしています。この対立は、教会をより包摂的な方向へ向かわせようとしている教皇に真っ向から反対して、文化戦争でますます泥沼化している中間管理階層による、何十年にもわたる硬化した組織的汚点と反LGBTQIA+擁護の声によって引き起こされたのです」